BOOK ダイヤのA

□倉持×亮介01
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 チーム内では小柄だと言われる俺よりも低い身長。
 外に跳ねた、ピンクの髪。
 真意を悟らせることはない、いつも笑っている目。

 亮さんは、俺のことをどう思ってるんスか……?

 ◇ ◇ ◇

「こらっ」

 そんな声と共に、脳天に衝撃が落ちた。

「宿題が分からないって俺に泣きついてきた割には、余裕そうだね」
「……いや、その、」

 にっこりと笑った目が、逆に怖い。
 この表情を見たことは何度もあるけど、自分に向くのは初めてだ。

「自力でできるんだったら、俺も明後日提出の宿題やりたいし、どいてもらいたいんだけど」
「すんません、ぼんやりしてましたっ」

 亮さんの机を占領してまで教えてもらってるのに、意識を飛ばしてたのは俺が悪ィ。
 素直に落ち度を認めて謝ると、もう一発脳天にチョップを食らっただけで許してもらえた。

「で、分かんないのはここ?」
「それから、ここの解き方が……」
「これはこういう風に見ればいいじゃない?」

 亮さんが俺からシャーペンを取り上げて、小さく文字を書き込んでいく。
 僅かに触れた指にドキッとして、バレないように頭を振った。

「これは、2番目に書かれてる公式を使えばいいんだよ」
「あ、なるほど」
「倉持は、応用になると一気に弱くなるね」

 自覚はあるだけに、痛いところを突かれて反論が出来ない。

「基本は出来てるのにね。応用にもパターンがあるから、それが分かったら簡単だと思うよ」
「あざす!」

 両手を上げて伸びをすると、亮さんは「頑張ったね」と頭を撫でてくれた。
 思わず硬直してしまって、その隙に手が離れていく。

「ごめん、春市にやるような癖で」

 癖って……俺、亮さんが弟君にそうやってるの、見たことないんスけど。
 なんて言ったら、黒い天使が降臨しそうだから言えねぇ。
 小っさいころの話とかか?

 踏み込んでもいいかな。
 同室の人がいない、今ならば。

「……亮さん、聞きたいことがあるんスけど」

内容によるけど」

 部活のこととか、そういうのだったらね。
 あっさりと言われて、撃沈する。

「まぁ、とりあえず言ってみたら?」
「……亮さんは、俺をどう思ってるんスか?」
「? また唐突だね…」
「俺にとっては重要ス」
「後輩」

 意を決して聞いた事が、たったの一言で撃沈させられる。
 分かってはいたけどよ、やっぱそれなりにショックだ。

「まぁ、宿題の面倒を見てやるくらいには仲はいいと思ってるけど」
「ホントっスか!?」

 今自分が、沢村にも負けないほどの犬になっていることは自覚している。
 それでも、歓喜に尻尾を振らずにはいられなかった。

 もう少し、いいかな。
 もう少し踏み込んでも。

「亮さん、髪の毛触ってもいいスか?」
「どうして?」
「いや…あの、嫌だったら諦めますけど、」
「別にいいけど」

 よっしゃ!
 内心でガッツポーズして、場所交代。
 俺が座っていた椅子に、亮さんが座る形になる。

「す……っげ」

 サラサラで、気をつけないと指から逃げてく。
 捕らえどころがない亮さんらしい髪質だ、なんて。

 捕まえたくなる。

「倉持……?」

 俺のものになって。
 それが無理なら、せめて誰のものにもならねぇで――。


END

2014/06/15

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