BOOK 家庭教師ヒットマン REBORN!!

□ベル×フラン01
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「ベル先ぱーい。アホのロン毛隊長たち、まだですかねー」
「知るか、オレに訊くなよ」

 返ってきたのは、つれない言葉。
 あまりにも冷たい声色に、ちょっとめげそうになる。

 隊長たちの到着を、ベル先輩を2人で待っているところだけど……
 正直、好きな人と2人きりでこの沈黙は、耐えられない。

「そうは言ったってー、ベル先輩以外に訊く人いないじゃないですかー。むしろこの状況でいたらホラーですよ、ホラー」
「オレだって知らねぇもんは知らねぇんだよ」
「ミーも知りませー…くしゅん!」

 ひゅう、と首元を風が吹き抜けて、背中から冷たさが這い上がってくる。
 もうちょっと中に着込んでくればよかったかなー。

「寒……」
「確かに寒ぃな。…ったく、こんなに風が出るとは思わなかった」
「嵐の守護者は風が読めるとか、言ってたじゃないですかー。この堕王子」
「黙れ。堕王子じゃねーし」
「堕王子ー(笑)」
「てめっ」

 おいカエル、こっち来い。と言われて、怪訝に思いながらもミーはベル先輩の座る一際太い枝に飛び移った。
 こりゃ、一発くらいは覚悟しといた方がいいんですかねー?

「何ですかー?」
「ここ座れ、ここ」

 そう言って、開いた脚の間を指す、ベル先輩。

「……は?」
「突っ立ってないで、さっさとしろよ」

 手をグイッと引っ張られて、ミーの体はベル先輩の腕の中に収まった。

「わわっ」

 体がぐらりと傾いて、慌ててベル先輩にしがみつく。
 すばらしいミーのバランス感覚はどこに行った。

 すみません、と謝ろうとしたんだけど……言葉が出なかった。
 ベル先輩が引っ張った勢いのまま、ミーを抱き寄せたからだ。

 金色の猫っ毛が顔に触れ、吐息が首筋に掛かる。
 バクバク言う心臓の鼓動が、ベル先輩に伝わってしまうかもしれない。

「んー、カエルぬくいなー。子どもは体温高ぇ」
「子どもじゃないですー。何するんですか、放してくださいー! てか放せー」
「やーだね♪ ぬくいもん。カエルも寒かっただろ? さっきくしゃみしてたし」

 ミーのことを思ってくれた……のかな?
 トクンと甘く心臓が痛んで、ちょっと苦しい。

「ベル先ぱーい、カエルが邪魔ですー」

 外していいですかー? と問うと、

「んー、仕方ねぇ、今だけだ」

 ベル先輩自らカエルを外してくれる。

「そう言えばー。何でカエル、先輩の前でしか取っちゃいけないんですかー?」
「るっせーな、どうだっていいだろ」

 つれない返事に胸がズキ…と痛む。

「どうでもよくないですよー。カエルを付けてるのはミーなんですからー」
「黙りな」

 ばふ…と胸に顔を押し付けられてしまった。

「むーむーむー!!」

 くぐもった声で抗議して、両手をパタパタ振る。

「暴れんなよ、カエル」

 そんなに嫌だったか……と、ベル先輩の呟き声。

 普段なら聞こえないようなとても小さな声だったけど、抱き寄せられてすぐ近くにいるこの状態では聞こえてしまった。

 聞き返すか、聞き返さないか。
 数秒間の逡巡。
 その間に状況は変わった。

「あ」
「おー」

 複数の人の気配。
 一般人には分からない、それどころか、そこんじょらのマフィアでも気付かないくらいに抑えられていたけど。
 それでもミーたちには分かる。

「隊長たち、来たようですねー」
「だな」

 ベル先輩が手早くミーにカエルを被せる。

「……やっぱり被らなきゃダメですかー?」
「当たりめーだろ」

 ハァー…と、わざとらしく大きく溜息を吐いてみせる。

 その時。
 ザッと音がして、隊長がベル先輩とミーのいる枝に飛び移ってきた。

「わわっ」

 枝がゆさゆさ揺れて、ベル先輩にしがみつく。
 隊長の長い銀髪が宙を舞う。

「う゛お゛ぉぉい゛、作戦開始だぁあ゛」

 それだけを端的に言って、隊長は飛び降りた。

「りょーかいっ」

 ベル先輩も続いて飛び降りる。
 バサリ、と上着の裾が広がった。

 さっきまで触れていたベル先輩の温もりが去って、寒い。
 小さなくしゃみが出た。

「…了解ですー」

 もう枝の上にいるのは、ミーだけだ。
 カエルの側頭部を叩いて部下に指示を出しながら、ミーは遥か下の地面へと身を躍らせた。


END


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