BOOK 黒子のバスケ2
□虹村×氷室01
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「いいんだろう、それ。気に入ったから、オレも同じのを買ってしまった」
照れくさそうにタツヤが笑って、同じものをバッグの内ポケットから取り出した。
「お揃いか」
「そういうことになるね」
自分で着けようとするのを奪って、オレと同じ、左手首に着けてやる。
この行為には、指輪と同じ意味を持たせてもいいのだろうか。
「オレと離れている間、これをオレだと思えよ」
「ああ……」
にやりと笑って手の甲に唇を落とすと、曇ったシュウの目が見えた。
落胆と諦め。
そんな色がいつもは綺麗な目を、不安げに揺らしている。
「どうかしたのか?」
「いや――」
揺れる目が伏せられ、長い前髪が表情を隠す。
左目だけでなく右目も隠れ、オレはベンチの上で距離を詰めて、無理矢理上を向かせた。
「……ッ。すまない、シュウ……」
泣き出す寸前だった目から、一粒の水滴が零れ落ちる。
真っ白な頬を伝ったそれは、オレに握られたままだったシュウの手に落ちた。
「これは、言うべきか悩んだんだけど……」
近々、日本に帰らないといけない。
か細い声で告げられた内容に、頭を鉄パイプで殴られたような衝撃を受けた。
タツヤが、日本に帰る?
オレのそばにいなくなる?
「父さんの仕事の関係なんだ。まだ内示の段階だが……」
多分確実だ。
絶望的なことを呟いて、タツヤは頭を落とした。
「オレだけがアメリカに残るわけにはいかない。シュウと離れ離れになってしまう……」
地面に、水滴がいくつも落ちる。
しゃくり上げることはなく、ただ静かに、濡れた地面が増えていくだけだ。