第一書庫
□お見合い!?母の逆襲そのB
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訓練後、堂上と小牧は一風 風呂浴びた後、夕食に行った。
ざっと食堂を見渡すと郁の姿はない。
今日は日報も問題なく、訓練ださら残業もなしだ。
郁が残業なら、堂上もここにはいない。
代わりにというのもおかしいが、柴崎と手塚が隅の方で、何やら楽しそうに話している。
もちろん、この場合、楽しそうなのは柴崎のみだ。
「笠原さんが柴崎さんと一緒じゃないなんて、珍しいね。どうしたんだろう?」
堂上が郁の姿を探してることなど、小牧には想像に容易い。
それが堂上には面白くないのか
俺が知るか、とぶっきらぼうに言いながら、定食の食券機に向かった。
「お邪魔かな?」
小牧が柴崎と手塚のテーブルに立つと、柴崎は大歓迎です!とばかりの営業スマイルで、どうぞと朝と同じように椅子を引いた。
堂上は、なんとなく居心地の悪さを感じて遠慮したかったが、ここで自分だけ別の席に座るのも不自然だ。
仕方なく、手塚の隣にトレイを置くと、お疲れ様です、と手塚が頭を下げた。
「ああ、お疲れだったな」
そう言って、堂上はさっさと食事を始める。
無関心のようでいて、余裕のない行動が明らかに裏目に出ていた。
「ところで、笠原さんは?」
小牧のセリフに堂上の喉がングッと鳴る。
おまっ、余計なことを聞くな!
気どられぬように、必死でカツを通過させ、さりげなく水で流し込んだ。
小牧もまた、くくくっと腹を押さえて堪えている。
このやろう、と思いながらも、堂上は素知らぬふりをした。
「いや、いつも一緒なんだから、気になるじゃない?」
誰に説明するふうでもなく、小牧がサラリと言った。
おまえが気になるのは面白がってるだけだろうが!
堂上は正面の小牧を見ないように
胸の内で悪態をつく。
「笠原は、さっさと食べて部屋に戻りましたよ。電話するから、とか言ってました」
誰にですかね?
柴崎は意味深にまた笑顔を見せる。
彼女もまた、誰に聞くふうでもない。
「私がいると話しにくいだろうし、かと言って外だと誰に聞かれるかわからないから、席外してるんですよー。いいルームメイトですよね?」
「自分で言うな!だいたいなんで俺まで付き合わなきゃならないんだよ」
とっくに食事を終えたらしい手塚は、空のトレイの脇に肘をついて不貞腐れている。
「ばっかねー!こんな美人が一人で食堂に居座ってたら、変な虫が寄って来ちゃうでしょー?」
虫除除けよ、と一言付け加えて、柴崎はお茶を優雅に啜った。
「だから!そういうことを自分で言うなよ!なんだ、虫除けって!俺は蚊取り線香か!」
手塚の反撃に、小牧がまた吹き出した。
「あっはっはっ!蚊取り線香!いいねえ、手塚。燃え尽きないようにしないとね」
小牧のブラックジョークに手塚は複雑な顔でボソボソと呟く。
「こいつに寄ってくる虫の神経を疑いますよ…」
「ちょっと聞こえてるわよ!」
「いてっ!」
柴崎が手塚の足をテーブルの下で蹴ったらしい。
「〜〜っ!お前、脛はやめろよ!」
「そうね、お婿に行けなくなっちゃうわね」
その柴崎のセリフは小牧にとって度直球だったらしく、豪快に笑い声を上げた。
「あっはっはっ!二人とも面白すぎる!堂上と笠原さんの上を行くかも…くっくっくっ」
「あらぁ、笠原より劣るところなど、私にはありませんよー」
まだ言うか、この女!
手塚が恨めしい目を柴崎に送るが、気にするそぶりもない。
そんなやり取りを傍観していた堂上は、自分に飛び火する前に席を立った。
笑いが止まらず、まだ食事の進んでない小牧に、先に戻るぞ、と告げる。
「二正、戻られるんですか?」
手塚が慌てて姿勢を正す。
「ああ、お疲れさん。お前も大変だな…まあ、小牧が死なない程度にやってくれ」
そう言って立ち去る堂上に、お疲れ様でーす、と柴崎はヒラヒラと手を振り、手塚は力ない敬礼をした。