第一書庫

□お見合い!?母の逆襲その@
1ページ/1ページ



県展後、数日はバタバタだった。

玄田隊長が復帰するまでの代行として緒方副隊長の指揮の下、事後処理や山のような報告書を上げた。


ようやく定時に上がれるようになった頃、郁に再び試練が訪れる。


「ただいまー」

「お帰り。今日は早いわね」

先に帰ってきていた柴崎が、ドレッサーの前で髪の手入れをしながら迎えてくれる。

「うん、報告書もようやく落ち着いてきたから…ずっとデスクワークだったから疲れたー」

テーブルに突っ伏す郁を見て、柴崎がニッコリと微笑む。

「お疲れさま。そんなアンタにラブレターが届いてるわよ」

髪を梳く手を止めずに、そんなあり得ないことをサラっと言った。

ラブレターなんて学生の時ですら一度ももらったことがない。
ましてや、戦闘職種についた大女に誰が好き好んでラブレターなんか…

半信半疑の郁に柴崎が含み笑を浮かべながら言った。

「テーブルの上、その茶封筒よ」

え、ほんとに?

郁は目の前にあった封筒を手に取った。
ラブレターにしては色気のない封筒。
サイズもA4で、おまけに分厚くて重い。

ファッション通販で、この手のものが定期的に届くことはあるが、それっぽい店名はない。
宛先は手書きで『笠原郁様』とあった。

この字…見覚えが…

嫌な予感がして、裏に返す。
差出人は…

「お、お、お母さんーー!?」

「ちょっと、笠原!声大きいわよ!」


絶叫する郁に柴崎がピシャリとしかりつけて、テーブルによってきた。
髪の手入れはひと段落したんだろう。

「県展で一悶着あったんでしょ?気になるわ!早く開けなさいよ」

いつの間に用意したのか郁の前にハサミを差し出した。
情報屋は、こういった個人宛の郵便にも興味があるのか、柴崎はテーブルに身を乗り出して目をランランと輝かせながらせっつく。
もっとも他人の郵便物の内容をせかすなど、親しい郁だからこそできることである。

「な、なんだろー、怖い!」

「お見合い写真だったりして」

柴崎がしれっと恐ろしいことを口にした。

「まさか!ないない!する気もない!」

「あんたがなくても、お母さんにはあるかもよー。かわいい娘を戦闘職種から奪還するにはいい口実よ」


まさか、そこまでするか?
するかも…あの母なら。

郁は恐る恐る封筒にハサミを入れた。
そっと中身を引き出すと、高級そうな台紙が数冊。
嫌な予感がした。

「ももも、もしかして…」

台紙を開くと、見知らぬ男性が郁に向かって、いや、実際はカメラ目線だが、微笑んでいる。


「お見合い写真ー!?」

「やっぱりね」

ビンゴ!とばかりに柴崎が両手をパチンと叩いた。
面白い案件だわ!と満面の笑みを浮かべてさえいる。

「これって、私にお見合いしろってこと!?」

「あたりまえでしょーが!あ、なんか手紙が入ってるわよ」


空の袋を覗いた柴崎は、半分に折りたたまれた白い便箋を郁に手渡す。

その字は、確かに母のものだった。

「郁へ
この間は、お仕事の邪魔してごめんなさいね。
お母さん、本当に郁のことが心配で…。
でも、無事で本当に良かったわ。

実はお隣の奥様から、素敵なお見合いのお話があったの。
貴女も女の子だから興味あるでしょ?
とってもいいお話なのよ」


そこまで読んで、郁は狼狽していた。

「ないない!興味ないから!」

「落ち着きなさいって。あら、この人いい男だわー!」

柴崎は既に相手の写真や経歴などのチェックを始めている。
抜かりがないというか抜け目がないというか、この同居人の方がよっぽど見合い向きなのではないか。
郁は頭を抱えながら、手紙の続きを読む。


『一週間後のお昼ににそっちに行きます。
どの人がいいか選んでおいてね。
楽しみにしてます。 母』

え?

【一週間後、そちらにいきます】

郁の頭の中で、その言葉が反芻する。

「えええええええええ-------!!」


男子寮まで聞こえていそうな郁の絶叫が響き渡り、柴崎が慌てて郁の口を塞ごうとするが既に遅かった。

あちこちの部屋から窓の開く音がして、なにごとだ!襲撃か!?など大騒ぎになり始めた。

素早くバルコニーに飛び出し、それらを、にこやかに対応した柴崎に郁はこっぴどく叱られることになった。




つづく





_____________________________________
あとがき

中途半端で終わっちゃいましたが、続きます。
本当は三部構成で書き上げたかったんですが
もう眠くて^^;

この先を「是非、読んでみたい!」という方は
やる気スイッチを連打してください。(嘘です)
(半分本気です)


ではでは、本日はこの辺で・・・寝ます。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ