恋は口に苦し

□適材適所
1ページ/9ページ


女の子には(人によるけれど)月に一度地獄のような痛みを味わう。

現世に居た頃からそうだけど私は女の子の日の痛みが酷い。
それを理由に学校もたまに休んでいた。
現世にいたころの薬は死んだから勿論持ってこれる訳も無く…。

私は痛みと闘っている。

布団から部屋を見渡す、とそこに先日地獄へ行った時のスケッチブックを見つけた。
あれからたまに地獄の風景を思い出しては描いている。

調子が悪いときもそうじゃないときもおいで。

そういえばあの時、白澤さんがそう言っていた。
暇になったわけじゃない…どうしても生理痛に勝てないから行くのだ。
私は意を決して、桃源郷へ向かった。


「ごめんくださ「サイッテー!」

桃源郷、うさぎ漢方極楽満月。
白澤さんが以前漢方医をしていると教えてくれた所だ。
そしてその白澤さんが上から降ってきた。
私の横を女の人が怒りながら歩いていく。

「…大丈夫ですか?」

シャチホコのような状態になっている。
あえて理由は聞かないけど、白澤さんの服が乱れている。
…つまりそういうことだろう。

「謝謝、あっ菜穂ちゃんいらっしゃい!暇になったの?」

この人は懲りないのかな…。

「すごい音がしましたけど大丈夫ですか、白澤様?」

そう声が聞こえ店の中から男の人が現れた。
ずいぶん古風なお顔立ちである。

「ああ桃タローくん、おこしてくれる?」

「まったくなにやってんですか…少しは懲りてください。」

よいしょと男の人は白澤さんを元に戻した。

「あ、お客さんですか?お騒がせしました、いらっしゃいませ。」

「ちがうよ、僕と遊びに来たの。」

白澤さんは私の横に来て肩を抱いた。
私はほんのり押しのける。

「ちがいます、お薬もらえますか?」

「菜穂ちゃんは釣れないな〜」

「お二人とも知り合いなんですか?」

「そうだよ、可愛いでしょ菜穂ちゃん。」

桃タローくんにはあげないよ、とまた肩を抱かれる。

「菜穂と言います。」

「桃太郎です、白澤様に困ったら言ってください。」

「桃太郎さんってあの?」

「まぁ…昔ですけど…」

なんと彼は鬼ヶ島で鬼を倒した桃太郎だと言う。
本当にいたんだ。すごい。

「で、なんの薬が欲しいの?」

白澤さんはぐいっと顔をこちらに寄せて言った。

「あの…痛みを和らげる…薬を…」

「なんの痛み?」

しまった。
うっかりしていた、生理痛なんていうのは恥ずかしい。

「えと、あの…」

「ああ…僕には言いにくい痛み?生憎ストックがないから今から作ることになるんだけど待てる?」

「お願いします…」
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ