短編小説

□魅いられない者の本音
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バカ?
って思わず言いたくなった。


言ってもいいよね?
ナチュラルバカしかいないんじゃない??





空から女性が空から降ってきた…らしい。

僕は見てないし、降ってきたって何処かから着地しただけじゃないって普通考えると思う。
…ナチュラルは出来ないとしたらもうソイツ、コーディネーターじゃない??



あ、でも自分で「天女」とか言って頭おかしいんだっけ…。
遺伝子操作の副作用とかでも重症だよね。


辞書調べてみたら?

美しくやさしい女性だよ?
まぁ、天に住む人とかにも指すけど落ちてきたなら住む資格無いってところが妥当だと思うんだけど…ね。



目の前では天女様、天女様と群がる人。

艦長や大尉…クラスメートで一緒にこのアークエンジェルに乗り込んだ皆も居た。






争いは駄目だよぉ〜
皆、仲良くしようねぇ


その言葉で整備班の皆は武装の破棄にいそしんでいる。




あぁ…本当にバカ。







この艦は今狙われてるのに…。

生き残る為の武装だったのに…。



僕がココに居たって、皆死ぬのが見えている。








だったら、さようなら。




だって意味がないでしょう?



僕はストライクを扱う為にいなくちゃいけなかった。

その力がないのなら守るなんてできないのだから―…。

もっと早く来てくれたらアスランの手を取ってラクスと行っても良かったのに…。







さて


ザフトが攻めてくる前にココから離れよう。

外は海で周りには何もないけれど、こんなバカ達と心中より可能性は高いでしょう?



海に流されながら、中立のオーブに辿りつければ幸い。


ザフトに見つかれば問題になるかも知れないけど、あの女がもし仕掛けなら騙されなかった存在として交渉の余地はある。

そうじゃなかったら…アスランに任せてみようかな?







「キラ…?そんな所に居たのか??」

「天女様が呼んでるわよ」



うわっ

巻き沿いはもう止めてくれないかな?



本当ならボートに乗って逃げて行きたかったけど、捕まったら最後っぽいし諦めよう。

チョッキに簡易だけど非常食の入った袋もあるし…。







『トール、ミリアリアもゴメンね。僕は行くから…』


「へ?」

「うん…だから来てって…」




行く場所が違うんだよ?


僕はデッキに足をかけ立ち上がる



周りから聞こえた悲鳴も耳に、驚いた顔を見せる友人を見ながら笑った。






さようなら―…




もう会うことは無いでしょう。

もう話すことは無いでしょう。

もう同じ道を生きることも無いでしょう。





あぁ…僕が本当に生き残れるかわからないけど、死んだ先であの女が居たら嫌だからこれが最後の会話にしてね?





背中に向け体重をかければ落ちていく体。


浮遊感が彼等と道を分けてくれるみたいで心地がよい。





バシャンと大きな音と水飛沫の中、僕は海へと沈んでいった―…。






















「…ラ…」

「…キ……り…ろ…」



真っ暗の中誰かが叫ぶ声がする。

体が酷く重く目蓋を開けるのも億劫だ…。









「キラ!!…しっかりしろ!!!」


やっと目を開ければ金色で眩しい色彩が広がる。





「私がわかるか…?」

『カ…ガリ…?』


声が掠れ上手くはっせられなかったが相手には届いたらしく嬉しそうに抱き着かれた。




何があったっけ?

僕はどうしてたんだっけ??






「アークエンジェルがザフトに撃たれたと聞いて…お前が無事で良かった…」



撃たれた…?

アークエンジェルが…??




あぁ…戦わなかったんだ。

いや、その時には武装を棄て切って何も武器がなかったのかな?





あんな女に現抜かさなければ生きれたのに。

ストライクを棄てなければ、まだ僕は皆を守ろうと残っていたかもしれないのに。





天女じゃなくて死神だったのかな?




出会った。

魅いられた。


『死』というものに近しものに―…。







『あれが死神なら、死も優しいものだね』

「キラ…?」



死ぬ瞬間まで夢を見せてくれる。

死ぬ瞬間まで側にいてくれる。

死ぬ瞬間まで愛を囁いてくれる。




死ぬ時に後悔するかは知らないけど―…。









でも僕はあんな気持ち悪い存在に二度と会いたくないよ。




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