(本)ご主人様と犬

□ご主人様と犬
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私、相川桜はある男に弱みを握られている。
それがこいつ、高島雄太郎。

「相川、今日もな」
「……!」
高島に肩を軽く叩かれ、私はびくん、と身体がはねた。

高島はそんな私の反応を面白がったのか、ふっと笑い、去っていった。

また、あんなこと、されるのか。
ーーーーいやだ!

高島は表向きは優しくて、実は腹のなかはどす黒い。
人の気持ちなどお構い無しなのだ。

いくら外見が良いからって、「王子様」と呼ばれているからって、中身が伴っていなければ詐欺よ、詐欺!

(ーーーどうすればいいの)


放課後、図書館。

「来たわよ。…さっさと終わらせてちょうだい」
男は椅子からゆっくりと立ち上がり、桜を目で捉えた。

「……後ろ、締めて鍵」
「誰もいないでしょうね?」
「もちろん」
桜は震える後ろ手で鍵を締めた。

「相川、来いよ」
「……高島…」
「どうした? この俺が恐いのか?」

桜は頭をふるふると振って、でも、震える足が止められなかった。

高島は桜にも聞こえるように大きくため息をついて、すべてのカーテンを閉めた。

私は咄嗟に電気の灯りを消そうとする。だが、高島はそれを阻止した。

「な…に」
「消すな。お前の感じてる顔を隠すな」

高島が迫ってきて、その端整な顔が間近にある。
まさに「王子様」という美貌。

「…相川。お前のコレがどうなってもいいのか?」

高島は1枚の写真をピラピラと見せつける。

それは……!

貸して、と叫ぶ前に手を差し伸べたが遅かった。
高島は身長の差を利用して、腕を高く掲げてしまった。
もちろんその手にはアノ写真。

「やだっ、その写真貸して!」
「だーめ。コレあげちゃうと相川をゆするネタがねえじゃん」

ネタ……。

その言葉に、ちくんと胸に針が刺さるような感覚を受けた。

「私は、あんたの人形じゃない……」
「そう。奴隷だよ。人形じゃない」
「ど…奴隷もやだ」
「じゃあ、なにがいいの?」

「……どれもやだ」
俯いた桜の顎を持ち上げ、高島は私の下唇をなぞる。

くすぐったくて、顔を背けるが顎を掴む手は緩めてくれない。

「口開けろよ」
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