†Short Novel
□†はやく大きくなりたい
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ドンッ。
書棚に戻そうとした数冊の図書がぶつかった拍子に、バサバサと床に散らばる。
手を繋いだ男女がいきなり飛び出して行ったのだ。
カウンターから外に出た僕は、入口付近にいたので、女の方とぶつかった。
彼女は謝ろうとしたのか口を開こうとしていたが、手を引かれて行ってしまった。
心の中でため息をついて、床に膝をつく。
と、僕よりも先に長くてすらっとした白い手が、本を拾いあげた。
視線を上に向けると、先輩がいた。同じ図書委員の、先輩。
「大丈夫?怪我はない?」
本をカウンターに置き、綺麗な手をこちらに向けてくれる。僕は慌てて、その手をとった。
もちろん、先輩に気づかれないようにスボンで手汗を拭いてから。
先輩の手に触れる前から煩い心臓はその指先に、わずかに触れただけで、さらに早鐘を打つ。
心臓が壊れそうな想いがした。
僕は右手を引っ込め、左手を差し出した。左手の中には落ちている本の一つ。
文庫本を先輩の手の上に載せ、ハードカバーの本を2冊、腕の中に抱え込んで立ち上がる。
自分の力で立ち上がると、先輩と視線が同じになる。
いつか、この身長が先輩の身長を越えたら、この想いを伝えよう、そう誓ったことを思い出す。
だから、放課後の図書室。
それも、月曜日。
それが、僕の毎週の楽しみ。
はやく大きくなれ、自分!
帰ったら牛乳、飲まなくちゃ。
End...