†Short Novel

□†月夜の想い
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 ふと…空を見た。

 カーテンの隙間から垣間見える、ごく小さな空。

 そこからは、半分と真ん丸の間ぐらいに太った月が浮かんでいた。

 あまりにも綺麗な月夜に、しばらく見とれた後、不意に隣にいる彼女の顔が浮かんだ。

 彼女のどんな表情を思い浮かべても、笑みがもれてしまう。彼女は、そんな僕に「何で、笑うのよぉ」とやや甘えた声で頬を膨らませる。そんな表情も可愛くて笑ってしまう僕を見て、彼女はそっぽを向いて拗ねる。

 そんないつものやり取りを思い起こしながら、やっぱり彼女の笑顔が1番好きだ。
 今も、月を見ていて浮かんだのは彼女の笑顔で、実際にその表情が見たくて、僕は、すぐ傍で眠っている彼女を見た。


 窓から差し込む淡い月光に照らされた彼女の寝顔に息をのんだ。


 僕は、右手で彼女に布団をかけ直し、彼女を起こさないようにそっと左手を動かした。

 腕まくらで眠る彼女の寝息を聞きながら、そっと、額に軽いキスをする。
 後頭部を支えた左手はそのままで、彼女の頭に僕は頬を寄せた。

 柔らかい髪からは、シャンプーの香りが漂い、眠気を引き起こさせられる。
 あくびを噛み殺し、涙ぐんだ瞳を閉じて、軽く彼女を抱きしめた。

 彼女の温もりを感じながら、僕は眠りに落ちた。
 笑顔もいいけど、寝顔もいいなぁと考えながら。


 だけど、結局はどんな彼女も好きな自分に気付くだけだった。



END...
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