ジョジョ(短編)

□Dear Bloody
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目を開けると身体が重かった。布団から出るのは億劫だが毎日のことなので慣れた。

なんとか立ち上がり冷蔵庫まで歩いていくとトマトジュースと書かれているパックを1つ取り出す。トマト100%と書かれたそのジュースは今はやりの商標偽造とやらはしてないらしく濃厚なトマトの味がした。350mm入りのジュースを飲みほし空になったパックをゴミ箱に捨てもう一度冷蔵庫の中を見る。

相変わらず冷蔵庫の中は赤いジュースに満たされておりそれに満足した私は冷蔵庫をしめ学校に行く準備をする。

ここで頭が覚めてきた私はやっとのことであいつがいないことに気づく。どうやらまた勝手に飛び出してしまったらしい。いっそこのまま帰ってこず太陽の光で灰になればいいのにと思うが残念なことにあれは吸血鬼ではないので太陽では死なない。

まあいるであろう場所はわかってるので慌てず冷蔵庫の中からトマトジュースのパックを2つ取りだし、そのうち1つにストローを挿しながら家を出る。

外に出ると幼なじみが手にバタバタと逃げようと抵抗する黒い物体を持って立っていた。やっぱりそこにいたか。いつも迷惑かけてすまんね。



「うっす、ナマエ。またディアが俺の所に来たぜ」


「ああ、やっぱりか。すまない仗助手間をかけさせて。今大人しくさせる」



そういうとともに私はひょいっと仗助の手から暴れる黒いコウモリを受けとる。そして首もとに持っていきそこに牙を突き立てさせる。すぐにチクリとした痛みと血の啜られる音がして私ははぁーとため息をついた。

本当になんともめんどくさいスタンドだ。

私の血を啜る私の両手くらいの大きさのコウモリだ。全体の色は黒で目は赤く頭の上は金色といった誰かを連想しそうになる色合いのコウモリだ。

これが私のスタンド、ディア・ブラッディだ。だだし、私のスタンドと言っても私の言うことなどほとんど聞かない。おそらくこれが自動操縦型スタンドというやつなのだろう。

ディアは私の意思の有無に関わらず仗助を襲う。仗助だけだ。他の誰も襲いはしない。仗助だけをその爪と牙で襲い殺そうとする。

幸いなことにディアの攻撃力自体は猫くらいのものしかないのと仗助自身もスタンドを持っていることから大事には至ってないが私の幼なじみを襲うスタンドというものに私はほとほと困っている。幸いディアは全くの自動操縦型スタンドというわけでもなく私の血を与えると私の言うことを聞くようになるので私は毎日ディアに血を与えてるのだがそれでも完全にディアを支配できるわけではなく最低1回、ディアは必ず仗助を襲う。私は毎日貧血になりながら頑張っているというのにあんまりなスタンドだ。こんな傍迷惑なスタンドが私に出現したのには私の出生が関係する。スタンドの色合いからもうわかるのではないだろか。私の父親の名前はDIOだ。

母親はDIOの狂信者だった。DIOを愛し敬い命さえも捧げて構わないと思うほど絶対的に尽くしそして私を授かった。

そんな母親だからこそDIOを殺したジョースター家を深く憎み毎日彼らに向けて呪詛を唱えた。そして私に向けても毒を吐いた。曰く、貴女は帝王の娘で憎きジョースターを討ち滅ぼしその仇を取らなければならないと。

そんなことを毎日幼い私に説いたわけだが生憎と私には馬耳東風だった。なぜなら私はDIOよりもジョースター家の方が好きだからだ。前世ではジョースター派だったんだよ。何いってるのかわからないと思うが気にしないでくれ。ただ私はこの世界を知っているのだ。

自分がDIOの娘なんてイレギュラーなものに生まれてたことには心底驚いたがだからといってゲロの臭いがする吸血鬼なんかを強くて格好いいジョースター家より好きになることなんてない。仗助が隣に住んでたのがトドメだったな。こんな笑顔が可愛い幼なじみを殺したいわけではない。そんなわけで親不孝ものではあるが私はジョースター家が好きだった。彼らを害するなんてありえない。

母は死んだDIOを思い憔悴して死んだ。この人のことは理解出来なかったが自分の母親が死んだのはやはり悲しかった。それ以来私は一人で暮らしてきた。

ちょうどその時期だったかもしれない。私にスタンドが出現したのは。

DIOの血を引いているのだからスタンドを使えても不思議ではないが実際にスタンドが出た時は驚いた。そして嬉しかった。

私もジョルノみたいに素敵なスタンドだといいなと思っていたらまあそれはとんでもないスタンドだった。なんといきなり仗助を襲い出したのだ。

仗助はなんで自分が襲われるのかわかっていないようだが私にははっきりわかった。それは仗助がジョースター家の血を継いでるからだ。このスタンドはジョースター家を殺すために生まれたのだ。私は頭を抱えた。

なんの意味もないと思ってた母の高説は効いていたのかもしれにい。私のスタンドはジョースター家だけを狙い襲うといった全く私本意ではないものとなってしまったのだった。

血を与えれば一応コントロールできるが私の血の量には限度があるし血だけでは完全に言うことを聞かせられない。こいつのせいで私は血が足りなくて貧血気味となり世間一般に病弱貧弱認定をされてしまった。本当に最悪だ。誰かこのスタンドを私からデスクにして抜き取ってくれよ。

首元からディアを放しそのあたりに放る。ディアをはパタパタしながら私の周りを飛び回りそしてゆっくりと私の肩に止まった。これで暫くは大人しくなるだろう。私は噛み痕に絆創膏をはりそして手に持ってたトマトジュースをすする。トマトジュースを飲んでも血液の量が増えないのは知ってるが気分の問題だ



「ナマエ、トマトジュース飲んだって血液量は増えないぞ?もっとレバーとかほうれん草とか食えよ」


「知ってる。気休めに飲んでるだけなんだ。それと残念ながらその2つの食物はどっちも嫌いなんだ。それよりごめん仗助。今日も迷惑かけて」



「全然気にしてねぇよ。ナマエは俺の幼なじみなんだから困ったことがあれば助けるのは当然だろ?」



そういって仗助はニカッと笑う。私は本当に恵まれた幼なじみを得たものだ。普通自分を襲ってくるスタンドの本体を許せるか?そそれが私の本意でないとしても襲われてる仗助からしたら考慮されるものではないと思うのだが仗助は気にしないという。本当に仗助いい奴だ。こんな優しい仗助を襲うなんてスタンドがどうして私に出てしまったのだろう。いっそスタンドなんていらんかったわ。DIOの娘みたいな設定とか本当にいらないから私をただの仗助の幼なじみにしてください。本気でそう思う。




「はぁ。なんで私のスタンドはこんなのなんだろう。仗助に迷惑かけるだけのスタンドとかいらないよ」


「えー、でも俺はナマエのスタンド結構好きだぜ」




仗助の言葉にこいつ正気かと驚きトマトジュースを吸うのをやめ、顔をあげると笑顔の仗助と目があった。そして仗助は照れたように頬をかくとそのまま嬉しそうに言葉を紡いだ。



「だってナマエのスタンドが俺しか襲わないのって俺が特別みたいで嬉しいっすよ!」



そういう仗助の顔は少し赤くなっていた。それは感情の起伏が少ないナマエのスタンドが自分しか襲わないのが熱狂的に愛されてるみたいで嬉しいという意味だったが、それに気付かない私は襲われるのが嬉しいって仗助ドMだったのかと突然の性癖暴露に驚いたのだった。


ーendー

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