ジョジョ(短編)

□エンゲージ・ライフ
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「何だこの状況」


「見てわかんねぇのか?てめぇを襲ってるんだよ」



承太郎に両手を纏めて1つにされ片手でいきなりベッドに押し付けられたこの状況がなんなのかと問えば襲ってると返された。なるほど簡潔で分かりやすい。どうやら私は幼なじみ件友人の承太郎に襲われてるらしい。いくら仲がよくても親のいない男の家に1人で行くのは危険ということか。よくわかった。すっごく学習できたから見逃してくれないかな?ワンモアプリーズ。チャンス下さい。以後こういうことはしませんので。



「落ち着こう承太郎。人間は話し合える生き物なんだ。まずなんで君がこんな奇行に走った理由から聞こうか。君はむやみやたらに女性を襲うような性犯罪者ではないだろ?なんでこんなことしたんだ?」


「てめぇが好きだからだぜ」


「予想外の理由に口から心臓が飛びたしそうなほど驚いたよ。そうか、私のことが好きなんだ。人生初の告白がこんなんで泣けばいいのか叫べばいいのかわからないんだがどうすればいいと思う?」


「俺と付き合えばいいだろ」


「なるほど簡潔だ」



なんでこんな状況になってしまったのかという至極全うな私の問いに承太郎はあっさりと私のことが好きだといった。それはびっくりです。承太郎って私のことが好きだったのか。こんなイケメンで背が高くて高学歴で金持ちの男を惚れさせてしまえるなんて私って罪な女だな。淡々といってるけど私実はめっちゃ驚いてるからね。ただ状況についていけなくて呆然としてるだけで心底驚いてるからね?何気に今ってまだ承太郎にベッドに縫い付けられてる状況なんだよ。誰か助けてくれないかな



「承太郎、気持ちは嬉しいが私はこんな状況で告白を受けたもんだから非常に混乱している。落ち着いて考えたいので1度手を離してくれないか?」


「それはできねぇ相談だ。最近のお前は無防備すぎる。俺以外の男に名前呼ばせたり身体に触れさせたりするんじゃねえ。もう誰にも触らさねえようにマーキングしとく」


「マーキングって君は犬か。君のいってる男がA君かC君かH君かは知らないけどそんなのただの友人としてのスキンシップで他意はないよ。承太郎、君は少し心が狭すぎないか?君のせいでたたでさえ私はクラスで微妙な立ち位置にいるのだからそんなことでいちいち目くじらをたてるのはやめてくれ」


「おいちょっと待て。今俺知らねぇ男の名前が出たぞ?誰だそいつら。俺のナマエに勝手に触りやがってぶち殺してやる」



承太郎の表情が怒りで歪むとともに私の手首に更なる負荷がかかり私は喉の奥で悲鳴を上げた。どうやら火に油を注いでしまったらしい。承太郎のいう名前呼ばせたり身体に触れさせたりしたのってクラスメイトの奴らじゃないのかよ。もうあと心当たりはありません。どちらかというと承太郎の勘違いだったんじゃないのか?本当に心当たりないもの。なんだ、ただのやぶ蛇だったのか。すまないA君C君H君、君たちに飛び火させてしまって。せめて承太郎の報復がオラオラでないことを願おう。承太郎はスタンドなくても恐ろしく強いけれども。

ああ、これでさらにクラスに馴染めなくなったらどうしよう。ただでさえ私の立場は承太郎のせいで微妙だというのに私のせいでクラスメイト諸君が殴られたら絶対に男子は畏怖の目で女子は嫉妬と憎悪の目で私を見てくるよ。承太郎という存在は良くも悪くも影響力が強い。これで私がぼっちになったらどうしてくれるんだ。承太郎は喜びそうだな。誰も彼もが君みたいに1人でいけていけるほど強くないんだからせめて私は集団生活に溶け込ませてほしかった。

まあそんな明日からのお話よりも今がヤバい。身長195cmの男にベッドに押し倒されてる状況がヤバくないはずがない。密かにホリィさんの助けを期待してたんだけどこの計算高い男が邪魔が入るかもしれない状況で私を襲ったりするはずがないのでそれは期待するだけ無駄だ。

だからといってこのままペロリと食べられちゃうのはいただけない。私も乙女だもの、こんなわけわからない状況で大切なものを失いたくない。なんとか時間稼げないかなー



「承太郎、私は付き合ってもいない男に股開くようなふしだらな女にはなりたくないんどけど」


「だから俺と付き合えばいいだろ」


「そうだ。告白もされてたんだ。本当にわけわからん状況だなこれ。えっと、じゃあ私は婚前の性交渉はしないと家訓で決まってる気がしてきたのでエッチなことはできません。私は家族と仲良くしていたいし家追い出されたくもないので許してくれませんか?」


「ふむ」



なんとかこの場を乗り切るために適当な方便を言ってみる。おそらくうちの家庭緩いし結婚前の性行為がどうたらなんか気にしないだろうけどまあ言ったもん勝ちだ。もしなかったら私の代からそうすればいい。この傍若無人の承太郎だが案外家族という言葉には弱く家族に対してだけは情が厚い。あのアマァ!とかいいながら本当はマザコンなことも知ってる。この容姿でマザコンって面白いよな。まあホリィさんという母親相手にマザコンにならないほうが難しいけれど。

そんなわけで予想通り家族に嫌われたくないという言葉に承太郎は反応したらしい。しめしめ。取り敢えず今日はこの場から逃げれたらそれでいい。明日からのことは明日考えます。今のところどうやったら逃げれるかなんて全く想像つかないけれど。



「なるほどな。確かに家族の同意を得られないのはマズイ。俺はお前に駆け落ちをさせたいわけじゃねぇからな」


「だろ?だからこの手を離してくれ」


「なら今から役所にいくぞ」


「は?」



押さえつけられていた手を離されその代わり腰を抱かれ身体を起き上がらされる。おう、イテテ。手首赤くなってるよ酷い。それでなんで役所になんかいくの?いやまあ展開は見えてるけど承太郎お前まだ17歳だよね?何しにいくの?



「何で役所になんかいくの?」


「婚姻届を貰いに行くためだ」


「まあそんな予感はしてたけど日本の法律では男は18歳にならないと結婚出来ないの知ってる?」


「当然知ってるに決まってるだろ。今日のうちに婚姻届を書いて俺が18になった瞬間役所に出しにいくぞ。心変わりできねぇように物証押さえとくんだよ」



そういう承太郎にああなるほど、と納得する。こいつ本当に隙がないな。今すぐ結婚できなくても最速にできるように準備を整えておくわけか。承太郎って詰め将棋とか得意そうだよね。文武両道才色兼備か。才能ありすぎだろ。というかいつの間にか私の逃げ道がなくなっています。貞操は守られたけど代わりに大切なものがなくなったよ。私の未来の進路です。学校に提出する進路表にお嫁さんv とか書いたら女子から陰湿なイジメを受けそう。もう私の学校生活も人生も全部終了したわ。おかしいな、どこで間違えたのだろ?



「オラ、行くぞ」



そうって手を掴まれ立ち上がらされる。敗因はこの男に目をつけられたことだろう。神に愛されたこの男に勝てるはずなどなかったのだ。



ーエンゲージ・ライフー


(おい、書けたら婚約指輪買いに行くぞ。白金でいいな?)


(わー、うれしー)


ーendー

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