ジョジョ(短編)

□ラブフラグは立たないものだ
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「シーザー、どうやったら男になれると思う?」


「ぶほっ!」



そう問いかけるとシーザーはむせ返りごぼごぼと飲みかけのコーヒーを吐き出した。それは広範囲に広がったが予めこうなることを予測してたので私に被害はない。ゲホゲホと咳き込むシーザーを見てニヤリと笑う。勿論シーザーがコーヒーを口にする瞬間を狙ってこの話を振ったのだ。わざとだ。このイタズラ癖は生来のものなのかそれともこの肉体の持ち主に由縁するところなのかはわからんが楽しいものは楽しいでいい。シーザーは実にイジリがいのある奴だ。



「ごほっ、はっ。いきなり何を言うんだジョジョ!コーヒーを吐き出してしまったじゃないか!」


「えー、そんなのシーザーの自業自得じゃないか。ひどいなー。私は真剣に悩んでいるのに吹き出すなんて友達がいのない奴だ」



そう口を尖らせて拗ねたように言う。当然私が悪いのだが認めることもないのでさっくりシーザーに罪を擦り付ける。君は友達を真剣な悩みを聞いて吹き出すのかい?ひどーい。

とはいっても切り出したタイミングは悪意なのだが悩みは真摯だ。私は自分が女であることに悩んでいる。

シーザーは私の発言を聞くと眉を寄せ真剣な表情になった。私が性根が曲がっていてシーザーにコーヒーを吹き出させたのはわざとだと奴もわかっているが話の雰囲気から内容はガチだと悟ったのだ。友達がいのない奴なんて言ってごめん。シーザーはいい奴だ。人として素晴らしくてしかもイケメンとは奴はどんだけ神愛されてるのだろうか。むかつく。顔面爆発しろ



「君は性同一障害なのか?」


「いや全然。心も身体も乙女です」



別に心が男であるとかそういうわけではない。今も“昔”も女に生まれたことから私は完全無敵に乙女である。女性に恋したりとかはない。まあ、揺れる巨乳にドキリとするくらいの男心なら持ってるけどね。



「じゃあなんで男になんかなりたいって言い出したんだ?君は女性としてとても魅力的だと思うぞ。何か不安でもあるのか?」


「やーだー。シーザーちゃんのスケコマシぃー。やばい、私口説かれちゃってるよ。だから女たらしなんて呼ばれるんだよこのイケメン!イタリアン!大好きだー!」


「ああ、俺も君のこと大好きだ。なんだ、男になりたいってのは冗談か?やれやれ、また君に騙されたな」


「いやそれは全然ガチ。スージーQを孕ませたいんだけどどうやったら男になれるかな?波紋でなんとかならない?」


「はあぁぁぁぁぁぁぁーーーー!!???」



シーザーは今日一番の絶叫をあげた。叫び声までイケメンだ。ちくせう

シーザーの驚いた顔を満喫できたのはよかったが私はこの問題には結構ガチで困っていた。

私の名前はジョセフ・ジョースター。父はジョージ・ジョースターU、母はエリザベス・ジョースター。まあこれでわかると思うが私はジョジョの奇妙な冒険の第2部主人公であるジョセフに転生してしまったのだ。

ジョセフは柱の男とか言われる吸血鬼よりやっかいな古代生物と戦ったり究極完全体と呼ばれる強靭無敵最強の男と戦ったり波紋の修行でイジメ抜かれたりと中々ベリーハードな人生を送ることになるのだがまあ、私は割とジョセフの人生を楽しんでいた。

確かに柱の男たちと戦うのは大変だが波紋みたいな超能力使えるのは楽しいし自分の人生が主人公だと思うとやりがいもある。カーズも最終的には主人公補正でなんとかなるでしょ。神様頼んだ!

そんなことよりも問題は私の性別か女であることだ。あ、シーザーにいった通り別に心が男の子なの!ってわけでもないよ?因みにシーザーは原作よりむちゃくちゃ優しい。私が女だからだな。この時代でも女は特だ。

話は戻るが私が女であると、ジョセフ・ジョースターが女であると、原作のようにスージーQと結婚できないのだ。スージーQに子供を産んでもらえないのだ。つまりホリィが誕生しない。これは大問題だ。

ホリィが産まれないということは承太郎が誕生しないということだし徐倫ちゃんも生まれてこないし、てか仗助も生まれないじゃん!そんな未来やだ!

というか承太郎産まれてこないとDIOを誰が倒すの?私無理だよ?老いぼれのスタンドが一番なよっちぃぞー!とか言われるもん。ヤバイ、カーズ倒せたとしても世界が滅ぶ。

そんなわけでスージーQに私の子供孕ませなければならないんだけどどうしよう?



「波紋ってすごいじゃん。だからこう、なんか都合のいい波紋とかで男になれたりしないかな?手術で男になっても外見だけで精子作れるようになるわけじゃないからやなんだ。それじゃスージーQ孕ませられないしね」


「ジョジョ、もう君が何を言っているのか理解できないがひとついっておく。性別を変える波紋なんてもんはないしあっても俺は君を絶対に男にはしないからな!君はちょっとガサツだが君のように美しく可憐な女性がむさ苦しい男になるなど頑固認めん!俺は認めないぞジョジョー!!!」



そういってシーザーはバンッとテーブルを叩いて立ち上がった。その表情は鬼気迫るものがある。だが私もここは引けない。なんてったってジョースターの血筋が途絶えることは世界の滅亡を意味する。ジョセフに生まれた以上私はこの使命をやりとげないといけないんだ!!



「シーザーがなんと言おうが私はスージーQとの子供がほしいの!これは柱の男を倒す並みに大切なことなんだ!!!」


「どんな事情があるかは知らんが女同士子供はできない!諦めろジョジョ!!」


「やだやだやだ!絶対にヤダ!私は子供がほしい!」


「そんなに欲しいなら自分が産めばいいだろ!俺が孕ましてやる!!」



そういうとシーザーはガシッと私の手を握りしめた。その目は熱く見つめられただけで溶けてしまいそうだ。アレ?なんだこの展開。おかしいな、3分前までコメディ調に進んでたのに急にラブコメが頭角してきたぞ。ちょっと落ち着こうと思ったのだがシーザーの手から伝わってきた熱に私まで熱くなる。お前クールなチャラ男なんじゃないのかよ。いきなりそんな情熱的にならないでくれよ。私までおかしくなる。らめぇー!



「えー、シーザーちゃんヤり捨て宣言?いやーん、不潔ぅー。私そんな男に身をまかせられないわ」


「そんなことはしない!俺は真剣だ!君に結婚を申し込む!!」



そう言葉尻に力を込めながら叫ぶシーザーの目はガチだった。本気と書いてガチと読む。コメディに戻そうとしたのにラブコメが継続されてしまったよ。なんだこの流れは。スージーQを孕ませる話が私が孕まされる話になってるよ。というかシーザー真剣なのか?



「えっと、シーザー。イタリア人は離婚できないんだが知ってるか?」


「なんで結婚する前から離婚の話が出るんだ。もちろん知っている。俺は神にお前への愛を誓えるぞ。柱の男を倒してから言おうと思っていたが俺はお前のことを愛している」



このスケコマシ!どうせ他の女にだって愛を唄っているんでしょ!といいたいところだけど結婚は違う。イタリアでは離婚は認められていないのだ。全くできないというわけじゃないが恐ろしく面倒な手続きを踏まないといけなく事実上離婚できないに等しい。結婚は中々リスキーな言葉のはずだ。

つまりこれは本気で本当のプロポーズなのだ。嘘だろシーザー。お前いつから私のこと好きだったの?ちなみに私もシーザーのこと大好きだよ。私は前世からシーザーを愛してます!

さてはて、なんかとんでもない展開になったけどこれはこれでいいんじゃね?スージーQとの子供はもうけられないけどシーザーなら遺伝子的に優れてるしきっとかわいい子が産まれるよ!そして産まれたのが女の子ならもちろんホリィと名付けよう!

私の名前はジョセフ・ジョースターだが性別は女だ。ならばこういう展開になるのもおかしくないよね!取り敢えずシーザー!私もお前に言いたいことがあるぞ!



「シーザー、私も実はお前のこと愛してるんだ!その申し出受けるよ!私と結婚してくれ!」


「ジョジョ!ああ、お前が俺と結婚してくれるなんてこんなに嬉しいことはない!必ず幸せにするよ。俺を選んでくれてありがとう!」


「うん、じゃあ修行しようか。リサリサ先生に稽古つけてもらおう」


「え?」



私がにこやかな笑顔でそういうとシーザーはポカンと表情になった。互いに愛を誓いあった直後だ、甘い雰囲気になりつつ最低キス、あるいは最後までいっちゃう?今から子作りしちゃうの?と思ってたのなら甘かったな!残念ながらこの話はコメディで進められるのだ!

というかシーザー、君原作通りだと死んじゃうんだよ?死亡フラグは立ってるのだよ?私を未亡人にするつもりなのか。うん、というわけで修行しましょう!ワムウは手強いです。



「え、は?修行?なんで急に修行なんて、いや大切なのはわかってるけれど」


「何をいうシーザー!まず柱の男達相手に生き残らなければ私と君のラブロマンスは始まらないのだぞ!私と君の未来のためにレッツファイティング!!」


「そ、そうだな。確かに柱の男達を倒さなければ君の指輪の解毒剤は手に入らない!俺は俺以外から送られた指輪を君に身に付けさせていたくない!よし、俺も戦うぞジョジョ!!」


「キャー!シーザー素敵ぃー!格好いい!あ、そうだシーザー。リサリサ先生って実は私の母親なんだ。だからちゃんと『僕に娘さんを下さい!』って言ってね?」


「は?」



私の言葉に再びシーザーの目が点になる。そしてその後驚きの声をあげるシーザーに私はニヤリと笑った。

私の名前はジョセフ・ジョースター。年は18歳のうら若き乙女。主導権は握られるより握るもの。

マンマミヤー!と叫ぶシーザーを見て私はジョセフとして産まれることができてよかったと心底思った。


ーendー

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