ジョジョ(短編)

□友情無情、ただ非情
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私がJOJOの世界に転生したのだと気が付いたのは公園で一人ぽつんとブランコをこいでる赤い髪の男の子を見つけた時だった。その男の子は緑色の服を着ていて赤い前髪と足をぶらぶら揺らしながらブランコをこいでいた。

ほかの子たちにあの子はなんで一人なの?と聞けばあいつはうそつきだからと返された。いもしない緑色の友達を主張するあいつはうそつきで頭がおかしい、そういってだれもあの子に近づかなかった。

緑色の友達と聞いて私はまさかと思った。じっと男の子を見つめるとその子の持つ身体的特徴は私の記憶の中の彼と一致した。私はほかの子が引き留めるのを無視してあの子に話しかけた。


『ねえねえ、君名前はなんていうの?』


そういうとあの子は一瞬びくりと体を震わせるとかきょういん、と呟いた。ああ、やっぱり彼は花京院なんだ。ジョジョ3部スターダストクルセイダーズのメンバーの一人花京院典明なんだ。ここはJOJOの世界なんだ。

ぞくぞくと背筋に何かが走る。だって自分自身があのJOJOの世界にいてさらに目の前には主要キャラの一人花京院がいるのだ。うれしくないはずがない。

これはチャンスだ!せっかく幼少期に会えたのだから花京院と仲良くしたい!そしてあわよくば花京院のお友達になりたい!自分の応援していたアイドルグループに直接会えたような感覚だ。絶対にこのチャンスを生かしてやる!

私はにこにこしながら花京院に笑いかける。すこしでも印象を良くしよう。私はゆっくり口を開いた。



『かきょういんっていうんだ!私はナマエだよ。ねえ私と一緒に遊ぼうよ!』


『…きみはぼくの友達がみえますか?』



そういうと花京院は自分の隣を指さす。そこにはきっとハイエロファントグリーンがいるのだろうけど生憎と私には見えない。残念だけれど私はスタンド使いではないようだ。私は首を横に振った。



『ごめん見えないや。でもそこに君の友達がいるんだよね?』


『いないものをどうやって信じるんですか』



そういうとキッと花京院は鋭い目付きで睨み付けてきた。私はそれにびっくりした。先程までの戸惑いを感じさせられながらも穏やかな雰囲気はどこにもない。花京院は私に敵意を向けていた。



『でもいるんだよね?信じるよ』


『うそだ!みえないのに信じれるわけがない!ぼくに同情してるつもりか!もう話しかけてくるな!』



そういうと花京院はブランコから降りて走り去り見えなくなってしまった。私と花京院のファーストコンタクトは最悪なものになってしまった。

私は本当に花京院にスタンドがいることを知っている。それどころか彼がこれから辿る未来の軌跡すら知っているのだ。でも花京院は私を信用してくれない。彼にとって信用するに値する人間はスタンド使いだけなのだ。

これは困ってしまった。私にはスタンドはない。ないものはない。どうしようもない。

でも私には諦められなかった。本来なら会うことも叶わなかった世界の人間が目の前にいるのだ。手をのばさずにいられない。

それからも私はずっと花京院につきまとった。そして私は君がスタンド使いであることを知っているといい続けた。

小中高と同じ学校に通い少しでも距離を縮めようと努力したがダメだった。スタンド使いかそうでないかの線引きが彼にとってすべてなのだ。スタンド使いでない私は彼に近づく権力すらないのだ。

私は泣いて泣いて泣いた。花京院にとってスタンドがすべてだというなら私にとっては花京院がすべてなのだ。花京院にあってから私の言動は全て花京院に作用され花京院だけを求めた。

でもこの10年間で花京院に近づくにはスタンド使いになるしかないと悟った。だから私は行動した。全ては花京院に認めてもらうためだけに。

貯金を全ておろしパスポートを取った。旅行かばんに必要なものをつめ私は家を飛び出した。

いくら原作を知っているとはいえ正確な場所まではわからない。シラミ潰しになるだろうが構わない。私は今自分の全てをここに賭けた。そして私は見つけた。



『君はスタンド使いになりたいのか?』



目の前にいる男は妖艶な空気を出しており暗闇のせいか顔は見えない。だけれども私が探していた人物だった。

目の前にいる男はDIOだった。この世界のラスボス、ジョースター家の因縁の敵DIOだった。DIOは確か私の記憶ではエンヤ婆の力を借りてスタンド使いになった。ということはここに弓と矢があるのだろう。それが私には必要だった。



『はい。私はどうしてもスタンド使いになりたい。そのために何を差し出したってかまわない。だから私をスタンド使いにしてください!』


『それほどの執念があればこの試練に生き残れるだろう。いいだろう、試してやる』



瞬間私は胸を弓矢に打ち抜かれた。容赦ない場所だ。スタンド使いになれなかったら死ぬしかない。

私は口の中から血を溢しながらふらふらと膝をついた。痛い、とてつもなく痛い。だが私は生きてる!

身体の中から力が沸き上がってくるのを感じる。やった!私はスタンド使いになれたのだ!

これで花京院に近づける。信じてもらえる。友達になれる!

そう思った瞬間頭にちくりとした痛みが走り私の意識は急にもやがかかったようにぼんやりとした。

ああ、肉の芽を埋め込まれたのだと気付いた瞬間私の意識はブラックアウトした。私は私ではなくなったのだ。






「やあ花京院くん。お久しぶりー!みてみて!私もスタンド使いになったんだ!」


「な、なんで君がここにいるんだナマエ!君がこんなところにいるわけがない!!」


「ふふふ、スタンド使いになったから花京院くんに見せびらかしたくてきちゃった。ほら、私のスタンド可愛いでしょ?自分でも気に入っているのだ!」



そういいながら私のピンク色のスタンドを見せびらかしその場でくるくる回る。花京院のそばにはあの承太郎やジョースターさんもいてジョースター一行か勢揃いだ。わーい、まさか主要キャラクター全員に会えるなんて感激だな!DIO様ありがとう!彼らの暗殺をご命令くださって!



「どういうことじゃ花京院!彼女はお前の知り合いなのか!?」


「僕の幼なじみなんです。でも彼女はスタンド使いなんかじゃなかった。なんでこんなことに」


「それはね、DIO様にスタンド使いにしてもらったんだ!DIO様は優しいよね。私がスタンドにしてほしいっていったらすぐにしてくれたんだもん」


「な、DIOだと!??」



DIO様の名前を出すとみんな驚きの声を出した。さすがDIO様人気者ですね!このメンバーに名前を呼んでもらえるなんてうらやましい。嫉妬してしまいそうです。私がDIO様の名前を出したからか全員スタンドを構えた。もちろんその中には花京院もいる。



「それが君のスタンドだね花京院くん!緑色に光っててすごくきれいだ。ねぇ、花京院くん。私は君のスタンドが見えることを証明できたよ。これで私と友達になってくれるかい?」


「ナマエ、君は」


「ああ、うれしいな。ずっと君のそばにいたかったんだ花京院くん。君に信じて欲しかった。君に頼られたかった。だけれどやっとこれで君のそばにいられる資格を手に入れられた。DIO様はあなた達を全員殺したら永遠に花京院くんのそばにいられるようにしてくれるといった。だから死んでくれ花京院くん。ずっと友達でいよう!」



そういうとともに私は花京院に向かって飛びかかった。これが正しいことなんだと信じきっていた。

私は幸せだ。だって今あの憧れのジョースター一行のそばにいるんだよ?これを幸せと呼ばないでなんていうの?

私は苦悩な表情をしている花京院に向かって笑いかける。ああ、楽しくて仕方ない!

正常な思考は食い尽くされた。ただ、私は笑いながらスタンドを振るったのだった。



〜友情無情、ただ非情〜


(結末は悲劇だった)


ーendー

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