ジョジョ(短編)

□ヒーローはだーれだ?
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誰だって一度は正義の味方に憧れる。おそらくそれは童話や子供向けアニメに影響されて抱く心なのだろう。女の子なら白雪姫、男の子なら戦隊ものからその影響を受けるのではないだろうか?私が影響を受けたのは某パンの戦士だった。あのアンコが詰まっている丸い顔の彼だ。もちろんみんな知っているだろ?著作権の関係上一部文字は伏せさせていただくがそう、アンパン〇ンだ。私は彼のことを心の底から尊敬している。

最初アンパン〇ンは私にとってほかの子と同じようにただの一キャラクターだった。ただのアニメのキャラクターだった。だがそれが変わったのは「ほんとうの正義というものは、けっしてかっこうのいいものではないし、そしてそのためにかならず自分も深く傷つくものです」という一言を聞いた時からだ。彼はただの正義の味方ではないのだ。ただ無条件に力をもっていてなんのリスクも負わずただ慈悲を振りまいているわけではなかったのだ。自分の身を削りその削った分の人を救っているだ。私はそれを聞いたとき感激して泣いてしまった。漠然とただ正義とは力があることではないと思った。

それからアンパン〇ンが私のヒーローだった。それは背が伸びランドセルを脱ぎ捨てた頃になっても変わらなかった。私はアンパン〇ンにあこがれ続けた。

だけれども別に私はアンパン〇ンになりたいわけではなかった。私は自分のことをわかってる。私はヒーローになれるだけの力なんてない、ただのモブだ。アンパン〇ンなんかになれない。アンパン〇ンがいかに素敵な人かわかってるからこそ自分がなれないことを知っていた。なれないならば仕方ない、できないならばできないなりにできることをしよう

私はアンパン〇ンを探すことにした。自分がなれないならそうである人を探すしかない。さすがに首から上がパンの人間は存在しないだろうから(いたらいくらなんでもそれは化け物だ)同じ志を持つ人を探した。優しくて強くてどんなに不利な状況になってもあきらめない仲間思いな人を探した。

しかし世界が広いとはいえそんな人はなかなか見つからない。他人のために自分を削れて悪に負けない強さを持った人などそういない

ヒーローの資質を持つ人を探しているわけだからそう簡単に見つかるはずはないとわかっていたがまったくなしのつぶてなので落ち込んだ。やはりアンパン〇ンは創作上にしかいないかとあきらめかけた時私は見つけた。

なんとその人は私のそばにいた。幼馴染の泣き虫ジョルノがその人だった。いつまにか持っていた黄金の精神と鮮やかに広がる金色の髪に私は驚かされた。

ジョルノは正義の心とそれを実行するだけの力を持っていた。灯台下暗し、青い鳥はそばにいる。ジョルノはスタンドという絶大な戦力を持ちそして正しいということがわかる人間だった。子供に麻薬を売りつけるマフィアにたった一人で乗り込みそして多くの仲間を得てその組織を倒した。また彼の能力は無条件に強いわけではなく治すにしても痛みを負う。ただ強いだけではなく痛みを伴う。それがまさに私の理想のヒーロー像と重なった。おまけに頭にコロネまでついているんだぞ?ああ、ジョルノ。君がヒーローだったんだ。

正義の味方をついに見つけるとこができて私は感動に打ちひしがれた。これ以上ないくらいうれしかった。本当に嬉しかった。

なのに!!


「ジョルノ、なんで君はマフィアのボスになっちゃうのだよ。君のその黄金の精神は正義のもとに極めるべきだと思うよ?マフィアじゃなくてパン工場を設立して正義の活動をしようよ。そうだろ?君はその頭のコロネがなんのためにあると思ってるんだ?」


「僕のこれはただのファッションですけど。あなたこそ僕の髪型をなんだと思っているのですか?まさかチョコレートをいれるためだとか思ってないでしょうね?それとパン工場を設立して意味の分からない活動をするというのは却下です。僕には僕なりの考えがあってマフィアになったので引くつもりはありません」


「いや餡子をいれるつもりだけど?やっぱり正義の味方はアンパンであるべきだと思うんだ。ジョルノ、お願いだよ。マフィアなんてやめて私とパン工場を設立しよ?ね?私毎日あなたのためにパンを焼くから」


そういうとジョルノは米神に手を置いて苦い顔をした。どうやら勧誘作戦は失敗のようだ。私も頭に手をやる。

やっと見つけた私の理想通りのヒーローであるジョルノはなんとマフィアのボスになっていたのだ。

ジョルノが麻薬を扱う組織を倒すためにマフィアに入り込んだのは知っていたがまさかそのまま、マフィアのボスになってしまうなど考えもしなかった。ジョルノは正義の味方なんだぞ?なのに何故悪党の称号を背負うのか

別にマフィアになったからと言ってジョルノが変わってしまったわけでないのは分かっていたがまったくもって納得できない。正義の味方は正義の称号を抱えるべきなのだ。パン工場を設立しそれを拠点とすべきなのだ。


「なにが不満なんだよジョルノ。あれか?ジャムおじさんがいないのが不満なのか?老人にあんまり知り合いはいないけど取り敢えずポルナレフさんに頼んでみよう。チーズはあの亀を代理において私がばたこさんの役になればこれで全員そろうね。一体何が不満なんだ」


「何が不満だといわれてもむしろ満足できるところが一つもありませんよ。まったく、セリフだけ聞くとプロポーズみたいなのに色気がありませんね。本当に残念です」


ふーとジョルノがため息を吐く。ため息つきたいのはむしろ私だ。こんなに素晴らしい人間性と力を持っているというのになんでこんなに頑固なんだ。昔はナマエちゃんあそぼーってニコニコしながら私の後をついてくる素直でかわいい子だったのにあのかわいげ何処にいった。変わりすぎだろ。いや変わったことはいいんだ。こんな風になったからジョルノはヒーローになれたのだからそれはいい。間違えたのは幼いころからジョルノを洗脳しとかなかったことだ。いかにアンパン〇ンが素晴らしいお人なのか伝えきれてなかったのが私の敗因だ。ちいさい頃なら素直に頷いたかもしれないのにはっきりミスをしたわ。クッ。だが、落ち着け。ミスをしたからといえまだ挽回できないとは決まったわけではない。ここからジョルノにアンパン〇ンがいかに偉大な戦士であるかを伝え正義の使者への転職を認めさせなければならない!私は自分の理想のヒーローをあきらめないぞ!



「いいか、ジョルノ。アンパン〇ン先生の偉大な哲学を君に教えてやろう。なんのために生まれて何をして生きるのか、これが彼の生き様を知る一歩であり彼が生まれながらにして正義の味方であることを示す重要な一文で、」


「何かが起こった時にはとにかく動いてしまう、そして結果的にそれが正しい、それがヒーローの素質なんでしょ?知ってますよ」


「そうそう、って、え?なんで知ってるのジョルノ!??」



アンパン〇ンについてイチから教えてあげようと思ったら私が話す前に答えを返されぎょっとする。え、君アンパン〇ンについて知ってるの!?なんで!?どこで!??



「僕は君の幼馴染なんですよ?アンパンマンの話なんて耳タコです」


「あ、バカ!ちゃんと文字は伏せろよ!著作権の侵害で訴えられるかもしれないだろ!?え、そうなの?アンパン〇ンのこと知ってたの?じゃあなんでアンパン〇ンと同じように正義の称号を背負わないでマフィアになったの???」



そういうとジョルノはやれやれといったような表情で呆れたようにこちらをみてくる。え、私しらない間にジョルノにアンパン〇ンのこと教え込んでたの?まあ私子供のころからアンパン〇ンしか興味なかったし一緒にいたジョルノに話していないわけはないけどえ、君アンパンマンのこと知ってたの!?じゃあなんでマフィアなんかになったの!??



「じゃあなんでマフィアのボスなんかになっちゃったの?私散々アンパン〇ンみたいなヒーローがいいって言ったよね?」


「僕には僕の信じるものがありますから。それに」


「?」



そこで一端ジョルノが言葉を切る。不審に思って怪訝な顔をするとジョルノはちょっと口元を少し上げて笑みを浮かべた。ちょっとその小癪な笑みはたとえるならイタズラを思いついた時のバイキンマンの表情に似ていた。



「君の大好きなアンパンマンなんかになるのはごめんです」



僕はアンパンマンなんか大嫌いですよ?と笑顔でそういうジョルノに私はさっと青ざめた。ま、まさかジョルノがアンパン〇ンを嫌いだと?それは予定外だった。というかめっちゃ困る!私のジョルノコロネパンマン計画が狂うじゃないか!



「ジョルノそれはダメだ!アンパン〇ンはホントに素晴らしいんだ!どれだけすごいか教えてあげるから考え直そう?ね?」


「嫌ですよ。僕は君がそうやってアンパンマンを熱狂する限り彼を好きになれません」


「えー!それは困る!すっごく困る!なら私はどうすればいいんだよ!」


「それは簡単ですよ。なら新しいヒーローを好きになればいいんですよ」



簡単なことでしょ?と小首を傾げてジョルノはいう。いや全然簡単じゃないぞ?私がどれだけアンパン〇ンに全神経注いで陶酔してきたかやっぱりお前知らないだろ。そんな簡単に心変わりするほど私の愛は浅くないわ!といってやろうとした瞬間ジョルノの手により口をふさがれ物理的になにも言えないようにされる。ちょ、ジョルノ!私にしゃべらせろ!




「ナマエはそろそろ夢物語のヒーローから脱却すべきですね。貴女に餡子しか詰まってない絵本の中のヒーローはいりませんよ」


「もがもが!ふがっ!」


「貴女のヒーローは以外と近くにいるんですよ?早く気づいてくださいね」



そういうとジョルノは私の口を覆っていた手を離した。ぷはー。で、私にほかのヒーローがいるって?何の話だ?そんなのはいないよ。私のヒーローは子供のころから彼だけだ。ずっとこれからもそうだ。

だけれどもジョルノは笑ってる。私にはその笑みの意図が全く分からなかった。


ーendー

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