ジョジョ(短編)

□もう逃げ場すらありません
1ページ/1ページ



1週間後、スピードワゴン財団の決死の作戦により私は逃げ回る承太郎の手から救出された。

父さんにどんな権力があるのかは知らないが昼夜問わずスピードワゴン財団の人たちが私の救出に駆けつけてくれて最終的に体力の尽きた承太郎を取り押さえる形で事件は収拾した。承太郎に連れられたこの一週間は本当にいろいろ大変だった。取り敢えず理解させられたことは兄さんがいうように承太郎は世界最強のスタンド使いだということだ。1週間ほとんど寝なくとも次々と向かってくる何十人もの人たちをちぎっては投げちぎっては投げ片づけていき、結局体力が尽きるまでは誰にも負けることがなかった。まったく、私はなんて恐ろしい人に目をつけられてしまったのだろう。別れ際には承太郎は多くの人に手足を押さえられながら『絶対に迎えに行くからなナマエ!』とクマのような雄叫びを上げそういっていた。実際承太郎の体力がまた回復したら手がつけられなくなるんだろうな。今のうちにどこかに逃げるべきなのだろうか?アメリカ?ヨーロッパ?それともエジプト?どれにしろただの女子高生の逃走劇には荷が重い。スピードワゴン財団が頑張ってくれることを祈ろう。

そんなこんなで私は一週間ぶりに我が家に帰還することができた。男と一週間外泊してたなんて単語だけ聞くとなんともふしだらな娘みたいだが実際は誘拐犯に連れ去られた被害者だ。そこのところ心得ておいてほしいね。ちなみに1週間承太郎と一緒にいたわけだがそういう行為は一切してない。単に時間がなかったということもあるが『次するのは式を挙げた後ウエディングドレスを着たナマエとしたい。初夜をやり直そう』という承太郎の希望でもある。何気に思ったけど承太郎ってなんだかロマンチックなところがあるよね。運命を信じたり初夜をしたいとかいったり君は結婚にあこがれる乙女か。まあその実態はただの性犯罪者であるのでいくら乙女ちっくでも萌えもなにも感じない。私は初めてを奪われたことをそれなりに怨んでるのだ。

家に帰ったらまず母さんのおいしいご飯を食べた。ちなみにこの事件母には暴漢にあったことまでは言ったが犯人については知らせてない。だって犯人は母の恋人(向こうには家庭あり)の孫で私にとっては甥にあたる人物にあたるというなんともややこしい上一応親族だ。やったらめったら混乱を招かないためにも兄さんにも口を噤めさせ母には暴漢された挙句ストーカー被害にあってるとだけ説明した。そしてこの一週間はストーカーから逃げるために友達の家に避難していたということにした。困ってるならちゃんと相談しなさい!と母には叱られたがこればっかりは母さんには相談しにくい。家庭環境が複雑なだけでなく母さんにもスタンドは見えないのだ。心配してくれる母さんには申し訳ないがここは父さんのことを頼りにしておこう。そういえばせっかく会えた父さんだというのに全然会話とかできてないな。是非もう一度あってちゃんと父さんと話したい。私は結構父さんのことは好きっぽい。

ご飯を食べたら今度は兄さんのところに行く。母さんはあいつなんか荒れてたわよ、というと仕事に出かけた。それは申し訳ない。この一週間なんだかんだいって兄さんにも心配と迷惑をかけてしまった。まず謝罪と礼をいおう。それに何より私は兄さんに会いたくてたまらない。私にとってただ一人きりの兄弟なのだ。その兄の顔を見たくなるというのも普通のことであるだろう。



「兄さん、ただいま。帰ってきたよ」



特にノックもせずに兄さんの部屋のドアを開ける。私と兄さんの間に遠慮なんてものはないので私たちにとっては普通の行為だ。だが今日に限ってはノックした方が良かったかもしれなかったと後悔した。

中は荒れていた。台風でも通り抜けたのかというくらいあらゆるものが破壊されテレビは砂嵐を映しタンスは壊され中から敗れた衣服が散らばりとどめに机が真っ二つになっていた。母さんは兄さんは荒れてるといっていたがさすがに度が過ぎている気がする。それとも物を直せる兄さんにとってこの程度の被害は大したことがないのだろうか?

兄さんは部屋の中央にこちらに背を向け座っていた。電気がついてないので薄暗いが電球も壊されたしまったようなので仕方なくその状態のまま兄さんに近づく。こんな部屋にいると目が悪くなるぞ兄さん。



「兄さん、ナマエだよ。帰ってきたよ」


「ナマエ?本当にナマエなのか?」



そういって兄さんの肩に手を置くと兄さんはゆっくり振り返った。視界が悪いからわかりにくいがうっすら隈ができているように見える。随分心配をかけててしまったらしい。申し訳ない



「うん、ナマエだよ。心配かけてごめんね兄さん。いろいろありがとう」


「ナマエ助けてやれなくてすまねえ!でもお前が無事で本当によかった!!」



そういって振り返った兄さんに抱きしめられた。感動の再会だ。私の涙腺はゆるみそうになる。スピードワゴン財団の話では兄さんはあれからなんとか私を救い出そうといろいろ行動したがすべて承太郎に見抜かれうまくいかなかったそうだ。向こうはスタンド使いとしても知略を廻らす人間としても何枚も上手だ。スピードワゴン財団だって最終的には人海戦術でけりをつけたんだから兄さんが気にすることは全くない。気持ちだけでもうれしいよ、ありがとう兄さん



「大丈夫だったか?何かひどいことはされなかったか?本当に無事なのか?」


「うん、大丈夫。めっちゃ元気。それより兄さんの方が大丈夫?顔色悪いよ?」



兄さんの顔色は本当に悪い。隈だけかと思ったけどちょっとやつれてないか?誘拐されてた私より体調悪そうだ。まあ私の場合逃行中は一流レストランで食事をとってさらに高級ホテルで寝泊まりしてたから普通に体調はいいです。それどころかいつも以上に毛並みがいいかも。承太郎はそういうところはいい奴だった。もちろんそんなことでほだされたりはしないけれども。まあだがしかし3日目に泊まったホテルの伊勢海老は最高にうまかったといっておこう。

私のことより大切なのは兄さんのことだ。兄さんは自分自身を直すことはできないんだからもっと自分を大切にしてほしい。



「大丈夫じゃねえかもな。俺はずっとこの1週間不安で不安で仕方なかった。ナマエが誘拐されて俺のそばにいなくて、ほかの学校に行くって言ったときは気にならなかったのに1週間ナマエが承太郎さんのそばにいると思うと怖くてしかたなかった」


「兄さん、」


「ナマエと俺はすっと一緒だったんだ。なのに離れていくなんてありえねえぜ。ナマエは俺のナマエなんだ。誰にも取られたくねえ。俺だけのものであってくれ」


「兄さん?」



兄さんの言葉に感動して聞き入っていたら何やら雲行きがおかしくなった。取られたくない?俺のナマエ?なんかセリフおかしくない?どう考えても妹にいう言葉じゃないな。取り敢えずいったん離れようとしたら逆に締め付けられた。げっ、内臓出るッ



「ちょ、兄さん苦しい。なんか出てはいけないものが出てきそうなんだけどプリーズストップ。ちょっと手の力を緩めてくれるとうれしいな」


「なあ、ナマエ。お前承太郎さんに処女奪われてそれが嫌だから俺に処女膜治してくれって言いに来たんだよな?」


「私の言葉は全無視かよ。そうだよ。それがどうしたんだよ?」


「治してやるよナマエ」



そういうと兄さんは私を部屋で唯一無事だったベッドに放り投げた。何するんだこいつ!と文句を言おうとしたが兄さんの表情を見て私は口を閉ざす。兄さんの表情は思いつめたように暗くそして目は血走っていた。

兄さんは私の腹部に手をかざした。するとお腹の奥がぎゅっとし閉ざされたような感覚を受けた。ひょっとしてこれで処女膜再生されたのか?兄さんってホントになんでも治せるな。スタンドって便利でうらやましい。



「どうよ?」


「うん、治ったっぽい。ありがとう、兄さんこれで承太郎とのことを肉体的になかったことにできるよ。よかった、やっぱり初めてがあんなんはやだもんね」


「そうっすか。よかったぜ。これで俺が心置きなくナマエの一番になれるんだからよう」


「え、」



そういうと兄さんは私をベッドに押し倒した。事態が急展開過ぎて理解できません。うん、これどういう状況だ?説明プリーズ!



「ナマエが承太郎さんに奪われて俺思ったんだよな。どうして俺はナマエを俺だけのものにしておかなかったんだろう。そうしたら奪われずに済んだのにって」


「いや、ちょ、兄さんそれはブラコンにしては行き過ぎてませんか?普通のお兄ちゃんは妹のそういうことにに対してむくれたり気にしたりはするかもしれないが自分がどうこうしようとは思わないぞ?兄妹はこういうことしないんだよ?おっけー?」


「承太郎さんとはしただろ?」


「あれは合意じゃねよ。不可抗力だ」


「ほら、手段を選ばなかったら家族だって奪えるってことだろ?俺はもうナマエを誰にも奪われたくない。俺の妹だ。俺だけのものだ。だから、絶対に承太郎さんには渡さない」



そうギラギラした目で兄さんは私を見下ろした。ああ、どうしてこんなことになったのだろう。なんで兄さんまでおかしくなってるんだよ。度重なるスタンドとの戦闘とやらでみんな頭いっちゃったんじゃないのか?私の平穏な故郷は本当にどこいったよ。衣服をはぎ取られて心の中で舌打ちする。どうやっても私の処女はここで失われるらしい。


〜もう逃げ場すらありません〜


(ナマエ、もう絶対にお前を離さないからな。承太郎さんにも渡さない)


(すいませんスピードワゴン財団さん、もう一人ヤンデレ化したので取り押さえていただけますか?)


ーendー

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ