ジョジョ(短編)

□この席が私の居場所です
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「さあ、ここが貴女の席ですよ!」



そうにこやかに笑いながらジョルノは自分の隣に置かれたイスを指す。そのイスはピンク色で背もたれのところがハートになっており色々と痛々しい。ラブホテルとかに置いてありそうなイスだ。いや行ったことはないけどさ。

何いってるんだこいつという意味を込めてジョルノに視線を送ってみるが笑顔の圧力を返され私は頬をひきつらせた。


ああ、どうしてこうなったのだろう。


私の名前はナマエ。うら若き15歳の乙女である。中学生という思春期真っ盛りのこの時代を流れに逆らわず謳歌している普通の女子中学生だ。

そんな私には彼氏もいてどんな奴かというと太陽の光を受けて輝く黄金の髪を持つ顔よし頭よし性格よ、し‥の天が才能を与えすぎた目の前に座るこの男、ジョルノ・ジョバーナが私の恋人だ。え、今言葉につまらなかったかって?気のせいだろきっと。

なんでこんなハイスベックな彼氏ができたのか私にもわからんがまあ私達はそれなりにうまくやってきていた。中学生らしく青春を楽しんでいた。

はずだったのだが、

いきなりジョルノと連絡取れない日が続き、おまけに学校にも来ないものだから事件にでも巻き込まれたのかと心配してたら、いきなりひょこっと帰ってきて『あ、僕マフィアのボスになりましたから』と宣言されたのだ。その時の私の気持ちはわかるまい。私にもわからなかった。うん、だってそんなこと言われたってどうしろというんだよ?

まだ実は『僕女の子なんです』と言われた方が納得できるわ。ジョルノの整いすぎた造形はもはや性別を超越してるので実は女の子と言われてもまったく驚かない。むしろお前本当は女なんじゃないか?女の私より美人ってどういうことなのだよちくしょう。ちなみにもしジョルノが本当は女の子ならよいお友達に戻ろうね。私はそっちの人間ではないから

百合っぷるになるのも困るがマフィアのボスの彼女であるのもすごく困る。いや、だって全うなご職業の方が就くお仕事ではないんだよ?正直一番一番関わりたくない人種の人々だ。だから、ジョルノよ。そんな素敵な笑顔浮かべられてもその席には座りませんよ?そのボスの恋人が座るためのものであると自己主張している椅子には座りません。恋人用ってよりはマフィアという言葉も相まって愛人用って見えるけどな。どちらにしろその馬鹿げたイスには座りません。



「いや座らないよ。そのダサいイスには絶対に座らないからね?それよりマフィアのボスってなんだよ。エイプリルフールにしては建物の用意もしてるしやり過ぎじゃないか?」


「ハートは僕の好きなマークなのでそこに恋人を座らせたいと思うのは当然じゃないですか。それとずっとギャングスターになるのは僕の夢って言っておきましたよね?今さら何を言ってるのです?」


「まあ確かに聞いてたけど本気とは思ってなかったしそれに中学生で実現できると思わないじゃないかこのチート野郎!どんな能力持ってたら15歳が裏社会を牛耳れるんだよ!この天才!カリスマ!支配者!」


「誉め言葉ですね。ありがとうごさいます」



そういってジョルノはニコリと笑みを浮かべる。だけれど嫌味にしか聞こえないので私はギリリと奥歯を噛み締めた。

ああ、確かにホメ言葉だよ!私の彼氏ハイスベックだなーと思ってたけどやりすぎたよバカやろ!15歳で社会変えたりすんなよ!正直ついていけないんだって!凡人なめるな!私はお前と違う階級を生きる人間なんだってわかれよ!

もうつまり私が言いたいのはいきなりギャングスターになるって言って本当にマフィアのボスになっちゃうジョルノを私は理解できないのだ。一般庶民の私には生まれながら帝王の資質があるジョルノと感性が全く違うのだ。私とジョルノは価値観が違うのだ。今回のジョルノのスケールのでかさに辟易したね。私とジョルノは根本的に違いすぎる。



「悪いけど私にはそのイスに座る覚悟はない。いきなりマフィアのボスの恋人でいろなんて言われてそれを受け入れられる器なんてないんだよ」


「器なんて必要ありまそん。そんなもの決断してしてしまえばなんとでもなりますよ。なので今覚悟してください」


「いやだから無理だって」


「…それは僕と別れるということですか?」



スッとジョルノの目が鋭くなる。先ほどまで表面上は穏やかだったのに今はギラギラと意識を剥き出しにしている。正直めっちゃ怖いです。ジョルノは怒らせたら怖いタイプの人間だ。

ヤバイ。ジョルノは女に手をあげるような人間ではないとはいえ今のジョルノはマフィアのボスだ。拐って拉致監禁コースぐらい余裕にできるだろう。これは詰んだか?人生終了コースか?

ジョルノの手が私に向かって伸ばされる。何だか怖くて私は思わず目を閉じる。あーもー、身体の震えが止まらない。私はマナーモードの携帯か。ジョルノの手が私の腕に触れた。私は身構えた。

その瞬間ジョルノに腕を掴まれ凄い力で引き寄せられた。え、ジョルノが暴力振るうだと?ダメだ監禁エンドではなくヤンデレ君を殺して僕だけのものコースだったのか。正解は逃亡だったね。逃げればよかったわ。

人生オワタと思って身を固くしたが追撃は来なかった。そして何かに座らされている気がする。

おそるおそる目を開くとあの趣味の悪いイス、ではなくジョルノの膝の上に座らされていた。これは予想外です。



「…あの買った人の趣味を疑うショッキングピンクのイスに座らせたいんじゃなかったの?」


「そこまでいいますか?僕はあれ気に入ってるんですけどね。でも君が座りたくないのなら座らせませんよ。僕は君の意思を尊重します」



そういってジョルノは私の腰に手を回した。それはセクハラ的なものではなく私を支えるためのものだった。この男できるッ!女性の扱い方までも心得てるのか。ちょっと出来すぎ君過ぎますよ。取り敢えずヤンデレコースでなくてよかったわ。

ジョルノは私を見上げるとにっこりと笑いかけた。それは打算的な計算された笑みではなく恋人に向ける優しい笑みだ。



「僕は貴女のことを愛してます。確かに僕の立場は変わりましたがそれでも変わらず側に居続けて欲しい。ダメですか?」



ついでにオプションとばかりに空いている方の手で手までも握られる。これで落ちない女はいないだろう。私も落ちました。惚れ直しました。

だって私もジョルノのことが好きなんだ。こんなかっこよくて紳士的ででもちょっとSな彼氏を好きでないはずがない。

でも流石に私にはボスの女という肩書きを背負うことはできない。15歳の女の子に求めることじゃない。だからそれは安易に引き受けることはできない。だけれども、



「…座るのがこのイスならいいよ」



そういって私はジョルノの膝の上に乗りながらへらりと笑った。まあジョルノ・ジョバーナの恋人のイスなら座らしてもらいたい。

握りしめていた手をほどきジョルノに抱きついた私は幸せだったのでジョルノの計画通りというセリフは聞いてないことにしてやった


ーendー

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