ジョジョ(短編)

□ああ、君に殺された
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初めて見たときはなんてきれいな人なのだろうと思った。流れるような金色の髪に儚げな表情、少年期特有の中世的な色気に私はくらりときた。

ぶっちゃけ初め見たときは私の想像の産物が幻覚として視界に映ったのかと疑ったものだが何度瞬きしても頬をぶん殴っても視界から消えないことからそれが実際に存在しているのだとわかった。

あんなにも整った外形をしているなんて彼はどれほど神に愛されているのだろうか。まあとりあえず言いたいことは私は道端ですれ違った少年、ジョルノ・ジョバーナに恋したということだ。






「やあやあやあ!ジョルノくん!お久しぶり!奇遇偶然必然だね!こんなこんな所で会えるなんてこれはもはや運命と言っても過言ではないよ!というわけでお茶にでも行かないかい?近くにホテルがある素敵なカフェを知ってるんだよ!」


「どこから突っ込めばいいのかわかりませんが取り敢えず死んでください。生憎僕は忙しいのでホテルが近い素敵なカフェとやらにはお一人で行かれて周りのカップルに惨めな思いをしつつハンカチを噛みながら悔し涙を浮かべ塩味のコーヒーを啜ればいいんですよ。まったく、いつもいつもどうやって僕の執務室までくるんですか?仮にもここはマフィアのボスの部屋ですよ?」


「私は甘党なので塩味のコーヒーはごめんです。ここへはミスタとかいう人がジョルノの恋人だって言ったらあっさり通してくれたんだよ」


「ミスタは後で絞めます。なので貴女はさっさと死んでください」



そういってジョルノくんははぁーとため息をつく。そんな姿ですら美しいのだから胸がきゅんきゅんしてしまう。例えジョルノくんが私へ向ける視線が養豚場の豚を見るような目であろうとその高鳴りは収まらない。むしろご褒美ですが何か?

ジョルノくんに一目惚れした私は彼のことを徹底的に調べあげ彼がイタリアンマフィアのボスであることを突き止めた。それを知った時には流石に驚いたのが好きになった相手がマフィアなんてことはよくあることだよね?むしろ障害が多い方が恋は燃えます!ってことでこの想いはさらに熱を持った。

以来ジョルノくんのところへ押し掛けては愛を囁き隙あらば私の乙女として一番大切なものを捧げてしまおうと目論んでいるのだがジョルノくんのガードは中々硬い。セニョリータに恥かかせるなんてひどい人だわ

ジョルノくんは米神を指で押さえながら嫌そうな顔をする。普段の帝王様モードのジョルノくんも大好きだが聞き分けのないクレーマーの扱いに悩む店長みたいな表情で頭悩ませるジョルノくんも大好物だ。つまりジョルノくんは全部おいしいです。



「もうそんなに僕のそばにいたいならパッショーネで雇ってあげてもいいですよ。その潜入能力は使えそうです」


「あ、ごめん。私が情熱をささげるのはジョルノくんへのストーカーだけなのでほかのことはできないと思うよ。私って自分の興味あることだけ記憶力を発揮するタイプの人間だから」



「恐ろしく無駄な能力ですね。やっぱり死んでください」



私のジョルノくん追跡技術が評価されたのかパッショーネに入れてあげてもいいと言われたが生憎私のヤル気と根気はジョルノくん限定だ。ほら、漫画のセリフとか国語辞典に乗ってるエロ単語の意味とかは覚えられるだろ?アレと同じだよ。私のヤル気は興味あることにしか発揮されない。その証拠に私の学校の成績は赤点まみれだ。まあこれはジョルノくん追い回しすぎて授業に出れてないからかもしれないけど

それにだいたい私はパッショーネに入ってジョルノくんを支えるその他大勢の一人になりたいわけではなくジョルノくんの特別になりたいのだ。ジョルノくんとラブエロしたんだって。君の部下なんてなりたくないよ?



「ベつに私はジョルノくんの組織に入ってシーラEみたいにキラキラした目で君を崇めたいんじゃなくてもっとこう、即物的に君と密度の濃い時間を過ごしたいんだよ。かわいく言うならイチャイチャしたいです。ねえ、ジョルノくん。どうやったら私のこと好きになってくれる?」


「貴女が死んでくださったら好きになりそうです」


さらりと言われたその言葉によし!じゃあ今から飛んでくるわッと返しそうになるが寸前のところで踏みとどまる。いやいや、さすがにいくら世界の中心で愛を叫んでも足りないくらいラブなジョルノくんの頼みでもそう簡単に聞いてあげられない。

だって死んだらジョルノくんを盗撮してコレクションアルバムを作ったりジョルノくんの私物をちゃっかり借りてペロペロしたりジョルノくんの使用済み下着をくんかくんかすることもできなくなるんだよ?天国にいったらそんなことできるわけないもん。クッ、こんな現世に未練たらたらで死ねるわけがない。たぶん死んでも地縛霊になると思うぞ。ポルナレフという例があるんだし私にできないはずはない!それでジョルノくんの第2のスタンドになるわけか。それはそれでありな気がしてきた。

でもやっぱり死にたくはない。たとえ地縛霊になれたとしてもジョルノくんに触れないのは嫌だ。まだ私はバージンどころかキスすらジョルノくんに捧げてないのだ。このまま死ねるか!だけれどジョルノくんに好かれたい気持ちもある。ジョルノくんと両想いになれたらそれはどれほど幸せなのだろう。もしそんなことになれば昇天してしまえる自信があるね!あれ?どっちにしろ死んでないか?

まあとにかくただでは死んでやれない。私のこと好きになってくれるというならそれを証明していただかないとダメだね!でも私を好きだとどういう風に証明するのだ?甘く一言好きと言われるだけじゃ満足できない。私はもっと即物的な人間なのだ。つまり何が言いたいかというとキスしてほしいのだ



「じゃあキスしてくれたら死ねるよ」


「そうですか。では死んでください」



とは言ってもジョルノくんはキスしてくれないだろうなと思ったらあっさり唇が重なった。視界が黄金色で染まる。

え、あのジョルノくんが?あのジョルノくんと?今私キスしているの?あ、はい。死にました。萌え死にました。もう悔いはありません、どうぞ殺してください。

しばらくすると唇はゆっくりと離れていった。いったいどれくらいの時間キスしていたのかまったくわからなかったが呆然としている私を見てジョルノくんはふっと笑みを浮かべた。


「本当ですね。キスしたら貴女は死んでしまいそうです」


そういってにっこりと笑うとジョルノくんは部屋を出ていった。残された私はただ顔を赤くしたまま呆然とその場に立ちつくした。

ああ、どうしよう、ジョルノくんがかっこよすぎて生きるのがつらい。というか私今ジョルノくんとキスしちゃったよ。そうだよ、キスしたんだ。もうダメだ、死のう。

私はその場にへろへろと座り込む。どうやら私はジョルノくんに殺されてしまったらしい。ドクンドクンと鼓動を刻む心臓は再びジョルノくんに撃ち抜かれたのだった。


ーendー

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