ジョジョ(短編)

□この恋は成就しない
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もし自分が悪役に成り代わったらどうするか

それも吸血鬼となり屍生人を僕として従え自分だけの王国をつくり逆らう者は殺すといった厨二感が溢れ出すような悪役に成り代わったらどうするのか。

答えは簡単だ、何もしない。私は真っ当に生きたいぞジョジョォォォ――――!!!


そんなわけで今世の私の名前はナマエ・ブランド―。ジョジョ界で常にラスボスとして君臨し続けたヒールに私は成り代わってしまったようだ。

なんでよりによって私はディオなんかに成り代わってしまったのだろう。ディオといえばその人生は養父に毒を盛り刺殺し義兄弟の幸せを奪いその肉体を支配しそして最後はその義兄弟の子孫に敗れ朝日により灰になるといった具合に外道を生き最後は正義によって破られるといった感じの悪役に相応しい死にざまだ。もちろん私はそんな人生はごめんだ。

そんなデンジャラスな人生は嫌だ!なんでよりにもよってディオの成り代わりなんだよ!こんなことならジョナサン成り代わりの方がよかったよ!嘘です!ジョナサン成り代わりも嫌だわ。だってジョナサンは首ちょんぱして死ぬんだもん。そんな人生も嫌である。

というかジョジョキャラの人生なんて総じてごめんだ!私は平穏な日本でアニメや漫画読みながらゲラゲラ笑ってられる人生で満足なんだよ!わざわざ危険な配役にぶち込まないでくれ!くそ、朝日で灰になるとか絶対嫌だからな!


そんなわけでディオの人生に早速嫌気がさしていたわけだが解決法は簡単だった。最初に言った通り何もしなければいい。

石仮面なんてものをかぶらなければいいしそもそもジョースター家の遺産なんてものを狙わないでいればいい。ジョースター家の遺産はおしいがお金で命は買えません!真っ当に生きて稼ぐとしよう。よし、自分の人生設計は決まった!

そうして落ち着いて冷静に自身のことを省み人生プランを立ててみたわけだが、そうすると自分の人生がいかに恵まれているかということも改めて分かった。

だって私は下町に生まれた平民の子でありながら貴族の養子になれるのだぞ?どうみてもシンデレラストーリーではないか!

しかも私は生まれ持っての容姿もいい。あの父親の遺伝子を受け継いでいるとは思えないほどの整った造形を私は持っている。これに関しては全面的に母親に感謝だ。美人でいてくれてありがとう!!!だって世の中所詮顔だもん!美人に産まれれてよかった!

というわけで私は対外的に見れば勝ち組なんだ。自分でもそう思う。

別にナンバー1の地位なんていらないよ。今ある財産だけで十分です。そんなわけで私はジョースター家に行って人並み以上の人生を享受できれば満足なんだ。

ということでジョースター家についても変な登場の仕方をせず普通に馬車から降り、駆け寄るダニーの頭を撫でにこやかにジョナサンに挨拶した。



「やあ君がジョナサン・ジョースターかい?」


「そういう君はナマエ・ブランド―だろ?」



私は表情筋を駆使しこれ以上ない最高の笑みを浮かべた。



「ああ、そうだよ。これからよろしくねジョナサン」



そういって手を差し出せばジョナサンも爽やかに私の手を取った。よっしゃー!ファーストコンタクトは成功だ!基本的にジョースター家はお人よしが多いからいったん人を信じれば疑うことはしない。

今ジョナサンは目のくらむ美少女の私が人当りの良い笑みで挨拶してきたことから悪意は抱いてないはず!このままジョナサンに気に入られてジョースター家の淑女の地位を盤石なものにし、貴族という地位のもと幸せな人生を築いてやる!

私の目論み通り私はジョナサンにもジョースターさんにも気に入られた。だがこれで安心する私ではない。

私はさらにジョナサンに密接になれるように試みた。ジョナサンに彼の苦手な貴族としてのふるまい方を教えたり勉学を教えたりして彼を助けた。2回目の人生であることと元々のこの身体のスペックが高かったことからジョナサンの教師役をかうことはさほど難しくなかった。

ジョナサンの資質の底上げを手伝うだけでなく私は公の場では常にジョナサンを立て彼の立場を支えることもした。そのおかげで彼には友人が多くまた教師からの信頼も厚い

ジョナサンの公私のサポートは万全だ。もはやジョナサンの中では私の評価はかなり高いことだろう。

これならジョースター家に見捨てられることはないだろうしもしかしたらジョナサンが当主で私はジョースター家の名誉顧問くらいの地位ならもらえるかもしれない。一生安泰に過ごせるかなー、なんて考えてた私の思考は甘かった。私はやりすぎたのだ。

まず私はディオの容姿を持っていることの意味を本気で理解できてなかった。あのディオの容姿だぞ?そんなもん絶世の美女に決まっている。

そして私はジョナサンを支え続けた。公私ともに彼を支え続けた。にこやかな笑みを浮かべ貞淑な女性そのものを演じジョナサンを支え続けた。

これがどういうことになるか。もし自分の傍に優しくて可憐でしかも自分を何も言わず支え続けている女性がいたらどうする?そんなの惚れてしまうだろ?

つまり恐ろしくとんでもないことにジョナサンは私に惚れてしまったのだ!ええええええええええ!??

いや確かに私はあざとく計画的にジョナサンに気に入られてようと思ってたけど別にそれは惚れてほしくてやったわけではない。時期当主のジョナサンに気に入られれば生涯安泰と思ったから媚び売ったのだ。一切合財好いてほしいだなんてそんなつもりはない。それにジョナサンの相手はエリナだろ?そう思って探りをいれたら『エリナ?ああ、彼女はいい友人だよ。なんだ、妬いてるのかい』とか言われた。別にそんなことはない。ただの事実確認です。おかしい、ジョナサンがおかしい。私の知ってるジョナサンはそんなこと言わないもん。

なんでこんな状況になってしまったのかはわからないが私はジョナサンと結婚できない。一つはジョナサンはエリナと結婚すべきだからだ。ジョジョファンとしてこれは譲れない!ジョナサンがエリナと結婚してくれないとジョースター家のその他もろもろが生まれないではないか!そんなのはヤダー!

そしてもう一つの理由、超個人的な理由だが私はジョナサンと結婚できない。その理由とは、



「やあ、ディオ。今日も可愛いね。何処に行くんだい?」


「あ、ああジョジョ。ちょっと図書館に勉強しに行こうと思って」


「へー、そうなの。なら僕もついていこうかな。昔の君なら僕を誘ってくれたのに最近の君はつれないね。どうしてかな?」



そういってジョナサンはにこりと笑いながら私の行く先を遮るように前に立ち塞がった。ジョナサンは笑っているが昔のようなさわやさはどこにもない。むしろその笑みに恐怖すら感じる。紳士ジョナサンはどこいった。女性の前に立ちはだかってるしこいつ全然紳士じゃないぞ。くそ、なんでこうなった



「え、でも君はラグビーの試合で疲れてると思うし行くこと無いよ。テストだってまだ先だし、ね?」


「僕に来てほしくないのかい?僕と君は兄妹なんだから常に一緒にいるべきだろ?それなのに僕を拒むってことは何か悪い虫でもついたのかな。ほら、君と同じクラスのマイク君とか」



その言葉に舌打ちしたくなる。なんで違うクラスなのに私の交友関係をこいつは知っているんだ。マイクは同じクラスの友人で筆記用具を貸したことから仲良くなったのだがどうやらもうジョナサンに目を付けられてしまったらしい。彼との付き合いはもうやめておこう。これ以上仲良くしてたらどんなことになるかは想像に難くない



「マイクはただのクラスメイトさ、それ以上でもそれ以下でもないよ。それよりジョナサン、やはり私は君と出かけたくなった。一緒に図書館についてきてくれるかい?」


「うん!もちろんだよナマエ!一緒に行こう?やっぱり女の子を一人で歩かせられないもんね!僕も一緒に行くよ。だから次の小テストの勉強教えてよ!」


「ああ、もちろんだ。じゃあ行こうよジョナサン」



そういってジョナサンの隣を通り抜けようとした瞬間手を掴まれた。ぎょっとして振り向いたがジョナサンは何も言わずに笑みを浮かべただけだった。ただ手をつなぎたかっただけか?私は困惑しながらジョナサンの手を握り返した。そのまま手をつないで歩きだそうとした瞬間ジョナサンが囁いた。



「ペン一つだって誰かに貸しちゃだめだよ?だってそれは元々ジョースター家のものなんだから誰にも渡しちゃいけない」



その言葉に今度こそ凍りついた。なんのことかすぐに分かった。マイクにペンを貸したことだ。だけれどそれだけでない。この言葉の意味はきっとそれだけでない。

ペン一つでも誰にも渡してはいけない。私はジョースター家のものだ。すなはち私は誰のものになってもいけない。

ホント誰だよ、こいつが正義の心を持った紳士とか言い出した奴は。ゲロくせえ。かつてのディオとは別種のゲスだよこいつは。

私がジョナサンと結婚できない理由、したくない理由ともいえる。それはジョナサンが最低の屑野郎になってしまったからだ。

ジョナサンは私を束縛し私のすべてを支配する。私がジョースター家に縛られている限り絶対にだ。私はジョースター家に援助を受けてるからこそ生活できてる。ジョナサンに逆らうことなんてできない。

こんなジョナサンにしてしまったのはディオのように生きなかった私のせいかもしれないが真面目に生きてきててこうなったのだから責められるいわれはないだろう。私はジョナサンが嫌いだ。人を力で押さえつけるこの最低野郎が大嫌いだ。

だけれど今私に逃げるだけの力はない。ジョナサンのためにと築かせたジョナサンの交友関係が私を阻む。ああ、くそ。自分の首を自分で絞めているよ。

それでも私がジョナサンと結婚することはないだろう。ジョナサンはエリナと結婚するべきだし私はジョナサンが大っ嫌いなのだからするはずもない。でも私には逃げる手段がない。あるとすれば、それは

ちらりと石仮面がちらつく。もし本当にどうしようもなくなった、その時は




「肝に銘じとくよジョナサン」




いつものように穏やかな笑みを浮かべ柔らかくそういう。

私とジョナサンが結ばれることはないだろう



〜この恋は成就しない〜


(結局原作通りになってしまう気がするよ)


ーendー

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