ジョジョ(短編)

□独りぼっちの私の世界
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私が空条承太郎に転生した時感じたのは絶望だった。別に女の子なのに“太郎”なんて名前をつけられたからではない。

私の母さんはイギリス人とイタリア人のハーフで日本の名前に疎くオーソドックスであるからという理由で私の名前は承太郎になってしまったらしい。何故日本人の父が止めてくれなかったのかと問い詰めたいが、私があの“承太郎”ならどうやってもこの名前になっただろうから深く追及しないことにする。

私は空条承太郎に転生した。母の名前はホリィ、祖父の名前はジョセフ・ジョースター。私は間違いなくあのジョジョの奇妙な冒険の主人公の1人である空条承太郎に転生してしまったのだ。

空条承太郎に転生したことを悟ったとき私はそのプレッシャーに押し潰されそうだった。

空条承太郎はその人生の多くを戦いの中に投じることになる。その中には世界の命運を分けるような戦いもあり負ければ世界に大きな転機を与えることになる。

その戦いを制するため空条承太郎はスタープラチナという最強の守護霊を得ることができるが私に使いこなすことができるだろうか。私は自分に襲い掛かってくるだろう敵を倒すことができるのだろうか。

私はDIOを殺すことができるのだろうか。

あの無敵の吸血鬼を自分がどうこうできるなんて想像もできない。でもやらなければならない。やらなければ母さんが死ぬ。

母さんは私にとって二人目の母になるが優しく時に厳しく愛情を注いでくれる母のことが私は大好きだ。死なせたくない。

そう思い生きてきてついにその時が来てしまった。私にスタンドが発動して祖父がやってきて花京院が刺客として私を殺しにきて、そして母さんが倒れた。助けるためにはDIOを殺さないといけない。

私は花京院とアブドゥルさんと祖父と共にエジプトへと旅立った。途中ポルナレフも仲間に加わり旅の支度は盤若なものとなった。

こういうと言い訳になるかもしれないけど私は自分なりにはうまくやれたと思う。

戦闘なんかしたことなかったが襲いくるスタンドを撃退し時には弱味を見せないよう堂々とした立ち振舞いをして相手を圧倒したり、原作と同じようになるように努力した。

だけれども所詮付け焼き刃、私は承太郎じゃない。DIOの館までこれたが私は承太郎になれなかった。

まず原作と同じようにアブドゥルとイギーが死んだ。私は助けることができなかった。

次に花京院が死んだ。DIOの能力は予め時を止める能力ではないかと疑念を抱かせる程度には皆に話していたがそれでも確信には至らず結局花京院はDIOの能力を確かめる為に死んだ。彼も原作と同じように死んでしまった

その後祖父、おじいちゃんが死んだ。時を止めた世界でDIOに刺されて死んだ。死体からは血が抜かれミイラのようになりその姿は痛ましかった。

さらにポルナレフが死んだ。彼はDIOと戦う私を助けるために飛び出て死んだのだ。彼が死ぬのは原作にない。私が承太郎になれなかったために彼を殺してしまった。将来、ジョルノを救う人がいなくなっていまった。世界が大きく変わってしまった。

そして最後に母さんが死んだ。私は間に合わなかったのだ。

最後の決戦の時私も時を止める能力を会得したがうまく使いこなすことができず殴りあいの血みどろの戦いをDIOとすることになった。

そうしているうちに日が昇りDIOは暗闇の世界に逃げ出した。アブドゥルさんがいない私は迷路のようなカイロの道を制することが出来ずDIOを逃してしまった。

その日、母さんは眠るように息を引き取ったという。もう誰もいない。

花京院もアブドゥルもポルナレフもおじいちゃんも母さんも誰もいない。みんなみんな死んでしまったのだ。もう私しかいない。

私は承太郎になれなかった。DIOを殺せなかった。私はどうすればいい?

いや、私は承太郎にはなれなかったけど承太郎であるのだ。ならばやはりDIOを殺さなければならない。

私が私であるためにはDIOを倒さなければならないのだ。客観的に考えればDIOが死んだとしても私に得られるものなどないのに私はまだ戦いの舞台から降りられない。まるで呪いのようだ。

幸いDIOは闇夜の度に私の前に現れた。そう、そうして私達の殺し合いは未だに続いている。



「ふふん、承太郎。貴様も執念深い奴だな。例え私を殺してもお前の仲間は帰ってこないのだぞ?もう諦めて私の物になればいいというのに」


「そんな日は永遠にこないよ。この戦いは君か私が死ぬまで続くんだ」



そういいつつスタープラチナを構える。度重なる戦いのお蔭で私はスタープラチナをかなり使いこなすことができた。DIOのザ・ワールドに何一つ劣らない。でも劣らないだけだ。私はDIOにいつも勝ちきれないでいる。それが何故だかわからない。私になくて承太郎にあるものはなんだろう?



「いい加減頑固な奴だ。貴様にこのDIOを殺すことができない。絶対にな」


「誘導には乗らない。私は君を絶対に殺す」



DIOはある一定の時間を過ぎた頃からこんな言葉遊びをするようになった。私にはDIOを殺せない。諦めて自分の物になれと。

そんなこというDIOの思考が読めない。承太郎にはわかるのだろうか?わからないものはわからないのでDIOの言葉は聞き流すことにする。どうせ意味などないだろう。



「なら仕方あるまい。今日も殺し合うとするか」


「ああ。今日こそ君を殺すよ」


「殺せないな。それがわからぬとは哀れだな承太郎」



DIOに何を哀れまれたのかわからない。だけれども関係ない。DIOを殺せばそれでいい。

私の思考はとっくに死んでいた。ただ漫然とDIOを殺すことしか考えない。ただDIOを殺せば終わると思っていた。

でもそもそも私は終わりを望んでいるのだろうか。この変わってしまった世界で生きることを私は求めているのだろうか。

DIOはこの“世界”で唯一の生き残りなのだ。本当に本当に最後の欠片なのだ。それを殺すということは世界、スターダストスルセイダーの世界の終わりを意味する。私は本当に終わりたいのか?何も救えなかったこの世界を終わらせたいのか?

そんなことは考えたくない。思い出したくもない。後の世界なんて考えたくない。だって、嫌でも思い出してしまう。皆皆死んでしまった。私が孤独だということを。

私は独りぼっちなのだ。



「スタープラチナ、時よ止まれ!」


「ザ・ワールド、時よ止まれ!」



そう叫ぶとともに世界が灰色になる。動くものは私とDIOだけだ。

スタープラチナが時を止めれる時間は刻々と増えていってる。今はもう1分も時間を止めれてしまう。それは勿論DIOも同じだ。

時の止まった世界で殺し合う。ああ、もういっそ世界の時間が止まってしまえばいつまでも殺しあえるのに。

そんなことを考えてしまっている私は気付かない。もう、DIOに絡めとられてしまっていることに。私が終わりを望んでいないことに。

この世界が終わる時、それは私がDIOに屈服した時か、それとも。

DIOはそれをわかっているから甘言を口にする。もう、堕ちろと。

世界に囚われた哀れな少女を殺さぬために。



ーendー

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