ジョジョ(短編)
□2
1ページ/1ページ
目の前にいるのは空条承太郎。彼は見事時を止める能力を会得して私の前に立ちはだかっている。
ポタリポタリと額からながれる血が私の視界を赤く染める。頭がじんじんする。吸血鬼でも痛いものは痛いらしい。回復力は凄いんだから早く治って欲しい。頭から血が出てるって怖い。
ついに決戦の時は来てしまった。ジョースター一行は私の屋敷まで来てしまった。
私は結局何もしなかった。何もせずジョースター達が来るのを待った。死にたくはない。でもどうしたいかは自分でもわからない。
私へと向かう足音は一つ増えて2つ減っていた。あの吸血鬼は向こうについたんだっけ?それとアブドゥルとイギーは原作通り逝ってしまったらしい。ということはヴァニラも逝ってしまったのだろう。彼はいつも私に良くしてくれた。いなくなったのは少し寂しい。今から私もあとを追うのだけれども。
目の前にいる承太郎を見据える。他の仲間は適当なところでのびてる。
何もするつもりもなかったのだが世界(ザ・ワールド)が一人でに応戦した。私の意思でなく勝手に動いた。
これはちょっと驚いた。世界(ザ・ワールド)に意志があって私を守ろうとしているのかそれともDIOの意志が残っていてジョースター家を滅ぼそうとしているのかはわからないが世界(ザ・ワールド)は戦った。
さすが世界一のスタンドだ、とても強い。花京院もジョセフもポルナレフも倒してしまった。
因みに花京院は殺していない。私の意志が働いたのだろう、世界(ザ・ワールド)は花京院を殺さなかった。ここまでなにもしなかったくせに偽善だが殺したくなかった。
そうして原作に近い流れで私はジョースター家を打ち破っていったのだがやはりただ一人承太郎は倒せない。やっぱり原作には逆らえないか。私はここで死ぬらしい。
「君の勝ちだよ、トドメをさせばいい」
「立ち上がらないのか」
「もう、君には勝てないと理解したよ。知ってたけどこの運命は覆らないらしい。無駄なことはしないよ。もう無駄なんだ」
額の傷は治ったが立ち上がる気力は湧いてこない。世界(ザ・ワールド)は構えてくれてるけど勝てないよ?ダメなんだ、どうしても無理なんだ。
この世界で承太郎には勝つことはできない。
「てめぇのスタンドはそうは言ってないぜ」
「この子は聞き分けが悪いんだよ。信じなくても信じてもどちらでもいい。君のしたいようにすればいい」
そういうと承太郎は無言でこちらを見下ろして来た。何もしないのか?いや、もうすぐ日の出だ。なにもしなくとも私は灰になる。それを待ってるのかもしれない。それもいい。最後に久しぶりの太陽を拝んで消えるよ。
「てめぇ本当にDIOか」
いきなり承太郎はそういった。突然発せられたその言葉に驚く。私がDIOじゃないとわかってくれたのか?いや、私はDIOらしくないし気づいて当然か?にしても気づいてくれたのなら嬉しい。私はDIOじゃない。
「違うといったら信じてくれるのか?」
「ならてめぇは誰だ」
「さぁ?わからないな。でもしいていうならただの貧乏クジ引かされただけの一般人だよ。なんでここにいるかもわからないや」
へらりと笑いながらそう返答した。本当に正直な私の意見だ。私はなんでここにいるかわからない。私はなんでDIOになってしまったのかわからない。でも私はDIOなんだ。
「なら俺が倒すべき相手はお前じゃないのか?」
「あ、それは合ってるよ。私を倒せば君のお母さんはよくなるよ。私だ、私はDIOなんだ。DIOじゃないけどDIOなんだ。何言ってるかわからないと思うけど」
自分でも何をいっているのかわからない。私はDIOじゃない。でもDIOなんだ。ここで死ぬのは私なんだ。
世界(ザ・ワールド)を持っている私がDIOなのは間違いない。だから承太郎か倒す相手は私だ。
承太郎は私の答えを聞いてチッと舌打ちをした。承太郎がイラついているのがわかる。彼もどうしたらいいのかわからなくなったのかもしれない。
「ふざけんな、何なんだ一体。俺はDIOとかいうふざけた奴をぶっ飛ばしにきたんだ。それなのに何なんだ。お前はなんでDIOじゃない」
「いや、そんなこといわれても困るよ。私だって好きでこうなったわけじゃないし」
「くそっ、俺はどうすれば、」
「あんまり深く考えなければ?ほら、どうせもう時間だ。何も考えなくていいよ」
そういうと承太郎はハッとした表情で顔をあげた。あたりは明るくなってきた。朝がくる。
「もういいんだ。わからないんだ。なにもしたくないんだ。なるようになればいい。だからこれでいい」
「おいまて。ふざけんな勝手に行くな。俺は何も納得できてねぇぞ。逃げんじゃねぇ!」
「納得なんてすることないよ。なるようになっただけだ。それに君にも時間はない。おそらく君の母親は今日が峠だ」
そういうと承太郎は私に向けて伸ばした手を止めた。そうだ君にもどうすることもできない。だってこれが運命なのだ。これが結果だ。
承太郎は私を救うことはできない。それはイコール自分の母親を見捨てることになるからだ。こんな見知らぬ私を助けるためにそんな選択をすることなどできないだろうしする必要もない。私は今終わる。
あたりが明るくなってきた。ゆっくりと太陽が顔を出す。ああ、太陽なんて久しぶりにみた。きれいだなー。この世の中で一番美しいものは太陽かもしれない。今の私にはそう感じる。
「じゃあね、承太郎。バイバイ」
「…なんなんだよこれは。お前は何でこんなところにいた。なんでこんなことになったんだッ!俺は、俺はッ、」
「さぁ?意味なんてないんじゃないかな?これは無意味な物語さ」
「何?」
「そう、無意味な物語だ。ここに私がいることは何の意味もない。何も変わらない。だからこれは無意味な物語なんだ。私は終わるためにここにいた」
ああ、日の出だ。身体が燃えるように熱い。楽な死にかたではないなコレ。火炙りってこんな感じなのだろうか。ああ、痛い
「さようなら承太郎。君は主人公なんだからがんばってね」
最後に承太郎が何かを言った気がしたけれどもう何も聞こえない。私の意識は光の中に溶けた。
結局なんで私があそこにいたのかはわからなかった。でもいくら考えても答えなんて出てこないし承太郎に言った通り私の存在は無意味だったのだろう。
ああ、無駄無駄無駄ァー。本当に何もかも無駄だった。
ここは私がいらない世界でした。
ー不要な世界ー
(もし次があるなら意味のある世界でいきたい)
ーendー