ジョジョ(短編)

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「死にたくないなー」


「どうかしましたかDIO様?」



ポツリと呟いた独り言をテレンスに拾われてしまった。あー、しまった。DIOは誰かに弱みなんて見せるキャラじゃなかった。もっとしっかりしないとなー、でもDIOのキャラって難しいよ。カリスマなんて私にありはしない。



「いや、なんでもないさテレンス。気にしないでくれただの独り言さ」


「そうですか。それにしてもおかしなことを気になさいますね。DIO様は不老不死なのですから死などおきになさる必要はないのではないのでしょうか?」



おっと、テレンスにしっかりと呟いた内容を聞かれていたらしい。そりゃそうだよね、DIOは不老不死の吸血鬼なのだ。死の概念を気にする方がおかしい。

でももうすぐこの身体は死んでしまうのだ。あと、1ヶ月と少し。それが私に残された寿命だ。私はこの身体が滅されることを知っている。



「永遠なんてないよ、テレンス」


「しかしDIO様は、」


「私の時間はジョースター家が来るまでだ。それから先は誰にもわからない」



ジョースター家がここにくるまで、それが私の時間の全てだ。私は空条承太郎に殺されて死ぬ。

どうして私はDIOなんかにトリップしてしまったのだろう。

気がついたら私はこの身体の主となっていた。理由はわからない。わかることといえば筋肉ムキムキの金髪イケメンになっていたということだけだ。

そして私は首にある傷痕と周りの人間に呼ばれる名前から自分が『ジョジョの奇妙な冒険』という書物の第三部のラスボス、DIOに転生したことに気がついた。

ラスボスということは当然主人公にヤられてしまう。DIOになった瞬間私は自分の死亡フラグを何とかしようと試みたのだがダメだった。

私が転生したのは3部の原作が始まった頃のDIOだ。もうすでに花京院やポルナレフなんかには肉の芽植え付けて刺客として送り込んだ後のようだし弁明の余地はない。私は完全にジョースター家に敵として認識されただろう。確実にジョースター家は私を殺しに来る。

もうどうすることもできない。私は呆然と暗闇に支配された自室に閉じ籠る。

突拍子のないこと我が身に起こってしかもあと1ヶ月ちょいで死ぬというのだ。そりゃ気も滅入る。

あと暗闇の中でしか生きれないのも鬱になる理由のひとつだ。太陽浴びれないのは結構辛い。このままだとモヤシになりそう。



「大丈夫ですよDIO様。ジョースター一行にはすでに刺客を送り込みました。それにたとえここまで来たとしても私めか始末いたします。DIO様の元に奴らがたどり着くことはありません」


「…ありがとうテレンス」



テレンスはそういうと一礼して出ていった。テレンスといいヴァニラといいDIOの部下は皆私に優しい。これがDIOの人徳か。さすがは悪のカリスマと言わざるを得ない。

でも私はDIOではない。彼らの仕える主ではない。

それに彼らもここにいればジョースター家に敵として葬られる。今のうち解放した方がいいのだろうか。それすらわからない。

あー、死にたくない。死にたくないなー。

私がDIOじゃないことを正直に話した方がいいのだろうか。いや、でもホリィさんを助けるためにはDIOの身体が死ななければならないんだっけ?じゃあどうしようもないね。私が助かる選択肢はない。


今日も私は暗い部屋に閉じこもりただぼんやりと時を過ごす。

ただ死ぬためにここにいるのだといたら私の人生はなんとも悲しいものだな。


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