ジョジョ(短編)

□籠の鳥も悪くない
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「なぁディオお前は何を企んでいるんだよ。さっさと吐けや」



私はそう悪態をつきながら目の前に立つ金色の髪の男に語りかける。

今の時刻は1時、館中の人間が寝静まるこの時間帯に私はディオを自分の部屋に呼び出した

夜中に自室に男を呼んだとバレたら父さんに怒られるだろうか。淑女としてはありえない行為だもんね。親として躾が出来てなくて恥ずかしいとか言われちゃいそう。ごめんパパン。でも今はレディとしてふるまってられるほどの余裕はないのです。

ディオ・ブランドー。7年前養子としてやってきた彼と私は兄妹となった。

ディオは表の顔はジョースターの名に恥じない紳士だが裏の顔はゲロの香りがするゲス野郎だった。何度奴にひどい目に合わせられたかわからない。

親友のダニーを蹴られたり友達とられたり胸ないなお前本当に女かと言われ続けたりと私はディオにいびられ続けた。

ディオは本当にひどい奴だ。私がしたことと言えばその度に犬嫌いのディオのシーツをダニーの毛まみれにしたりディオと一緒に悪いことし始めた元友人どもを先生にチクったりディオの頬を私の胸以上に膨らむまで殴ったりしたんだけではないか。奴は一度紳士という言葉を辞書で引いてくるべきだと思うの。え?お前本当にイジメられていたのかって?当たり前だろ?こんないたいけな乙女になんてこと言うんだよ、シクシク。

まあこんな感じでディオと水面下でやりあってきたのだが最近になってディオの行動がなりを潜めた。話しかけても爽やかな笑みを返してくるし女扱いしてくる。気持ち悪い、お前そんなキャラじゃないだろ?

ディオの目的がわからない。最初はこの家の遺産を狙ってるのかと思ったがこの間父さんに向かって『やはりこの家は実子であるナマエに継がせるべきです』って殊勝なことを言っていた。

どうせ本心ではないにせよ父さんにそんなこという意味がわからない。というわけで私はディオを呼び出し本心を暴こうとしているわけなのである。



「で、どうなんだよ」


「やれやれ、夜中の呼び出しだから期待したのだがそんな下らない用件か」



私の問いにディオは肩をすくめ小さく息を吐いた。下らなくねぇよ。お家の存続をかけた重要な問題です。

ディオがジョースター家の財産を狙っているのでなければもう好きにして。バックアップはジョースター家がするよ。好きに生きてねとなるのだがジョースター家の跡取りを望んでいるのなら全面戦争だ。負けたら日陰者の人生が待っている。そんなのは嫌だ。

私はディオを睨み付ける。で、お前は何がしたいんだ?



「俺は別にお前が家を継いでもいいと思ってるよ」


「え、本当?ガチですか?マジですか?」


「ああ、その方が面倒事が少なくていい」



ディオは淡々とそういった。え、リアルにそう思ってるの?父さんに言ってた言葉は本心だったの?いつもの猫かぶりのうわべだけの言葉じゃなかったの?マジですか?

ジョースター家継ぐ気ないの?まあ確かに貴族の付き合いって死ぬほどめんどくさいけど。あらボンジュール、お久しぶりですわねオホホとかもはや何語だよみたいな話し方で猫被らないといけないけどディオお前猫かぶり得意だろ?別にお前にとって貴族のマナーとか余裕だろ?いや、別にディオに家継いで欲しいわけじゃないけど。私が継ぐんだけど。

ふふふ、そうかそうか。ディオはジョースター家継ぐつもりはないのか。なんだディオいい奴じゃん!ごめんごめん君のこと誤解してたよ。じゃあ素敵な人生を歩んでね。バックアップはしっかりジョースター家がしてあげるから。



「なんだ、ディオジョースター家継ぐつもりないんだ。いやー、ディオにお家取られるかもって焦ってたんだよね。ごめんごめん、じゃあこれからも仲良くしてね」


「ああ、仲良くしよう。なんて言ったって俺たちは夫婦になるんだから仲良くしていた方がいいに決まってる」



いい感じで話が纏まったと思ったらディオの言葉に、ん?と首をかしげる。え、なんか今不穏な言葉聞こえたけどお前今なんて言ったの?ふうふ?ふうふって何?あれか、俺のためにフーフーファンファーレでも吹いてろよ的なあれですか?残念ながら私は波紋の呼吸できませんのでそんな画期的な演奏は出来ないぞ?なんか今電波受信したな。それは置いといて、で、夫婦だって?!!



「はぁ?なに言ってんのディオ。私はお前と結婚するつもりなんて全くないぞ。ほんと何言っているの?」


「お前こそ何言っているんだナマエ。お前が俺と結婚することは当たり前のことだろ?」



ディオがきょとんとした表情で心底不思議そうにそう言ってくる。いや、そんな顔されたって心当たりなんてありませんけど?なんで私がディオなんかと結婚することになってるんだよ。そんな予定も心積もりもありませんよ?どっから来たんだその話。



「いやなんで私とディオが結婚すんことになるんだよ。意味わかんねぇよ。なんでそう思ったんだ?」


「血の繋がりのない俺を養子として引き取ったんだからお前に家督を継がせて俺と結婚させるのは当然の選択だろ?やはり血はそれなりに重んじるべきだからな」



そうディオはふんっと偉そうに言う。いやいや、お前何言っちゃってるわけ?

こいつ何言ってんだと思うがディオ側の立場から考えると一応ディオの思考も理解出来なくない。

ディオはジョースター家の人間だが養子なので当たり前だがジョースター家の血は継いでない。だが貴族社会とは家督以上に血に重きが置かれることがある。

つまりディオはこう言いたいのだ。お前みたいな女でもジョースター家の血を継いでいるのだから娶ってやろうと。腹立たしいのはこれはつまりジョースター家がディオのものであることを前提に話が進められているという点だ。お前のじゃねぇよばーか!この家は私の物だ!

ディオは私と結婚しないと血筋を重んじられないけど私は婿を取れば別になんの問題もないのだよ。誰がお前なんかと結婚するか!



「それお前は私と結婚することにメリットあるけど私はないじゃん!お前と結婚することにお得感感じないんだけど?」


「この文武両道天才無敵のディオと結婚出来ることに一体なんの不満があるというのだ?」


「そのナルシストなところだよ馬鹿!」



自分のことをそこまで尊重できるのはある意味凄いがそんな旦那はいらん。

私は私の我が儘を聞いてくれる優しくて自己主張しない妻の後ろを3歩下がってついてくるような夫が欲しいんだよ。この時代にそんな夫見つかられるかな?なんで私は1世紀後の時代に生まれなかったのだろう。草食系男子が好みです。

ディオは私の言葉を聞くと額に皺を寄せ不機嫌そうな顔をし、口を開いた。




「そんな理由で否定されるとは思わなかったがまあいい。ならばわかりやすく俺と結婚した時のメリットを挙げてやる」


「何言われてもお前と結婚なんかしねぇよ。家督もやらん!」


「俺と結婚すればお前は家のことは何もしなくていい」



この自己中俺様ナルシストなんかと結婚することはない!と思っていたがディオの言葉に思わずピクリと反応してしまう。

え、何もしなくていいの?



「家の中の家事は人を雇えばいいしお前は日中好きなことをしてろ。家名に泥を塗ること以外は何をしていてもいい」


「いやそんなのお前と結婚しなくてももともとするつもりないしそんなことくらいではディオと結婚できないね!」


「さらに貿易の仕事も貴族の付き合いも全部俺がやってやる。お前は本当に何もしなくていい」


「なんだと?!」



ディオの言葉に思わず身を乗り出す。つまりディオの言葉を信じるならば私は一生引きニートでいていいということだ。ダラダラごろごろ家事も仕事もせずに惰性に生きていていいのだ。これいい条件じゃね?

私の理想とする旦那は穏やかで私の言うことを聞いてくれる奴だといったがそうすると旦那は気の弱い奴になってしまう。

商売や貴族との付き合いは化かし合いだ。それを気の弱い奴が出来るわけはないのでもし私が言う通りの旦那と結婚した場合外付き合いは私がしなければならない。だがディオと結婚した場合は違う。ディオは賢いから貿易も貴族との付き合いもうまくやるだろう。つまり私は何もしなくていいのだ。あれ?これおいしくない?ディオとの結婚よくない?

確かにあいつはナルシストで自己中で俺様で我が強いゲス野郎だがイケメンだし私のこと放任してくれるらしいし優良株な気がしてきた。ディオとの結婚ありかも。うん有りだ



「本当に何もしなくていいの?」


「ああ。妻として必要最低限の役目さえしてくれれば構わない」



そういってディオはニヤリと笑みを浮かべ頷く。 そのドヤ顔はウザイがディオと結婚すれば本当に何もせずによさそうだ。よし、乗った!



「ふふふ、仕方ない。ディオがそこまでどうしても私をお求めなら結婚してあげなくもないね!いいよディオと結婚してやろう!」


「ああ、ありがとうナマエ」



ディオは殊勝にも礼を言ってきた。おほほほほ。ディオにも私の価値がわかったということか。よいよい、これからも謙虚な態度で私に仕えたまえ。

にしてもディオが意外に話が通じる奴で驚いたな。いきなり父さんと私にを暗殺してジョースター家を乗っ取るくらい平気でしそうだと思ったのに。いやいや事件が起こらなくて良かったよ。これでこれから枕を高くして寝られるね。



「じゃあね旦那様。まあこれから仲良くしようや。あ、父さんへの報告は明日でいいよね?」



「ああいいとも。それともう1つジョースターさんにいい報告をできるようにしようじゃないか」



ん?と思った瞬間には私は自分のベッドに押し倒されていた。ディオ越しに天井が見える

え?え?どういうこと?今何が起こったの?



「おいディオ何するんだよ!無駄に話し込んじゃったしもうさっさと寝たいんだけど?」


「悪いが今日は寝かせてやれないな。まあ明日ゆっくり休むといい。どうせ起きれないだろうしな」



そういうとディオはシュルッと自分の胸元のタイを外した。おいおいちょっと待ってくれよ!え?これどういう状況なの?マズイのはよくわかる。

自室のベッドでディオに押し倒されてるわけなのだから客観的に見てもアウトだ。どうしよう、てかディオはどうするつもりなんだ?



「ちょっとディオ何するんだよ!私何もしなくていいんじゃなかったのかよ!」


「ああ、何もしなくていい。全部俺がしてやろう」


「いやするなよ。してもらわなくてもいいよ。お前散々私のこと色気ないって言ってたじゃん!なんで発情してるんだよ。取り巻きの女のところ行けよ」


「やっとお前を手に入れたのに何故他の女などのところに行かなければならない?これでやっとお前を囲うことができる」



するりとディオの手が私の頬に触れ肌が粟立つ。ディオの目はギラギラと光っていて獲物を補食するハンターの目になっていた。あれ?ミスった?選択を間違えた気がする。



「ちょっとたんま!落ち着こう落ち着けディオ!いやいや!私お前とこんなことするつもりないんだけど?!」


「俺はこういうことをする為にお前と結婚するんだ」


「マジかよ。お前私のこと好きなのか?」



もはやディオの言動が愛の告白にしか聞こえない。ひょっとしてディオが私と結婚するのって私が好きだからなのか?意外とピュアなのですね。行動はヤンデレ一本手前だけれど



「さあどうだろうな。俺はただお前を独占したいだけだ。お前を支配したい」



そういうと共にディオの顔が近付いてくる。ああヤバいと思ったが身体はディオに押さえつけられていてどうすることもできない。ディオの顔が吐息のかかる距離まで近付くと静かに言葉を吐いた。



「お前は何もしなくていい。一生俺が面倒を見てやる。逃がしはしない」



そしてあっという間唇が重なった。柔らかい感触に私は心の中でため息をつく。

どうやら私は鳥籠に自ら飛び込んだらしい。ディオは私の衣食住を面倒見るといって私の世界を支配するつもりだ。

でも別にそれで怠惰な日常を送れるならそれもいいかもしれない。だって時々ディオの相手をすれば何もせずに人並み以上の生活を送れるのだ。それならばいい。

籠の中が快適だと知っていたら飛び込む小鳥がいたっていいだろう。まあいいや。でも飼うなら大事にしてね。

私は触れる唇を自分からも押し当てる。それにこの自分勝手な男が私を求めるとは実に気分がいいものだ。



〜籠の鳥も悪くない〜



(どうやら父さんには婚約と同時に孫の紹介まですることになりそうだ)



ーendー

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