ジョジョ(短編)

□無気力な傍観者
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「ひーまーだぁー」


「うるさいぞナマエ。少し黙れ」


「そうは言ってもDIO、だって俺暇なんだよ。鎖につながれててこの部屋から出れないし英語できないから本も読めないしお前がかまってくれないとすることないもん。文句言うならかまえや」



ソファでゴロゴロしながら俺を閉じ込める男に文句をいう。俺の手首には手枷がはめられておりこの部屋に隣接するバスやトイレくらいしか行くことは出来ない。本を読もうにもすべて表記は英語でThis is apen.レベルの英語力しかない俺には読むことができない。結論をいうと俺は暇なのだ。



「DIOかまってよー」


「うるさい。俺はジョースター家を滅ぼすための対策を講じなければならないのだ!貴様にかまっている暇はない!」


「えー、どうせ勝てないんだから諦めて残りの人生を有意義に生きなよ。言ったじゃん、君は承太郎には勝てないって。ほら、そんなことしても無駄無駄ァー」


「俺がジョースター家に負けるはずはないだろ!そもそも貴様がもっと有効な手段を言えばそれですむ話なんだぞ?未来がわかるというならひとつ何か対策でも言ってみろ!」


怒りの声を上げながら文句を言ってくるDIOにえーと気のない返事を返す。もうこの話は何度もしている。だけれどもDIOが承太郎に勝つ方法など俺には思い浮かばない。


「だからそんなのわからないって言ってるじゃん」


「貴様は未来を知っているのだろう!そこから何か承太郎の戦い方や弱点を見つけることはできんのか!」


「だって、DIOは正面から承太郎にフルボッコされるんだもん。DIOより承太郎が強いんだからどうしようもないってー。人間諦めが肝心だよ?あ、DIOは人間じゃなかったっけ?」


「この役立たずがッ!貴様などその未来とやらを知ることが出来なければ生かしときはしないのに!!」



俺が正直な感想をいうとDIOはますます怒りを顕にした。今にも殺さんばかりの形相で睨らんでくるがDIOが俺を殺すことはない。何故か。

それは俺が未来を知っているからだ。DIOにとって俺は有益な人間なのだ。

そしてどうして俺が未来を知っているかというと不思議なことに俺は書物としてのこの世界を読んだことがあるのだ。

俺はこの世界から見ると違う世界の人間で、俺の世界ではこの世界は書物になっていた。

それは『ジョジョの奇妙な冒険』と呼ばれる漫画でそのおかげで俺はこの世界の行く末を知っている。

今、目の前にいる金髪の美青年はDIOという男で主人公の敵にあたる男だ。この男は今から主人公と戦いその仲間の幾人かの命を奪いそして最後主人公に敗れて灰になる。

DIOは頭が良くて冷酷でまさに悪のカリスマというような男だ。そんな男の元に俺はトリップしてしまった。

どうしてトリップしてしまったのかはわからないが俺は敵の本拠地の真っただ中にトリップしてしまったのだ。

突然の侵入者である俺はジョースター家の刺客であると疑われ殺されそうになったのだがつい口ずさんでしまったいろいろな俺の『知識』にDIOが興味を示してそれで幽閉される代わりに命を保証された。

DIOは俺の知識に興味を示し俺も死にたくないからペラペラ喋った。DIOが承太郎に負けること言っていいのかな?とためらったが嘘言ったのがバレたときの方が怖い気がしたので正直に言った。でもそのせいでヴァニラアイスに睨まれるようになった。なにこれ理不尽。

DIOは承太郎に倒され死ぬのだ。これがこれから起こるであろう未来。でも俺がDIOに協力すれば本当はこの未来は回避することができるかもしれない。

DIOにはごまかしているけど俺はかなり詳細にDIOと承太郎の未来を記憶している。だから承太郎が死んだふりすることとか時を止めることができるようになるとか怒らせたらダメとかそういうことを伝えたらあの未来を回避することができるかもしれない。

でも俺はそうするつもりはない。いくらかの情報を口にしても決定打は言わない。

だって俺は承太郎のことが好きなんだもん。このジョジョの世界の中でも特に強くてかっこいい承太郎のことが好きじゃない読者は俺の世界にはいないさ。そして俺はこの世界のキャラクターの中で承太郎のことが一番好きなのだ。

だからDIOに承太郎に不利になるようなことをいうことはしない。原作通りDIOに負けてほしい。

あー、俺ってひどい奴。承太郎達に刺客を送りながらも収穫がなくてイライラしているDIOを見て俺はニヤつく。

承太郎が来るまで生きていられるかはわからないが今日もDIOにかまってとせがみながら異世界をいきるのだった。


ーendー

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