小説

□素直になれる場所
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何で僕が…こんな目に……

確かに最近忙しかったから
ちゃんと休めてないけど…

なんで、何で…僕が、ノロなんかに……

何かの間違いかと思ったけど
あのへたれ小児科医が言ってたから
間違いない

人気アイドルの僕が仕事に穴を開けるなんて…

ついてないなぁ…

ベッドに横になりながら
熱特有の怠さと闘っていると
急に腹痛が風斗を襲い

……ぅ、…お腹が……

下しているのかぎゅるぎゅると嫌な音がして

と、トイレ行かなきゃ……と思うけど
痛くて動けない

どうしたら……

その時、
風斗くん?大丈夫?と少し間延びした聞き覚えのある声がした

風斗くん?入るよ?と言った後
その声の主が近づいてきた

る、るい……にぃ……?

風斗くんがノロウイルスに
かかったって聞いて…

どうしたの?大丈夫?

……お腹いたぃ……とそれだけ言うのが精一杯だった

風斗くんトイレ…行く?

……ぅ、動けな……っ……

ぎゅるぎゅるとまた不吉な音がして

風斗くん、僕に掴まって…?

……ん、…

風斗が掴まると琉生はいつもより急いだようすで風斗を担ぎ、トイレへ向かい

……風斗くん、着いたよ。一人で平気?

……るい、にぃ……
と風斗は琉生の服の裾を持ち引き留め

大丈夫、側に居る。
だから安心して。
…お腹、辛いよね?全部出しちゃおう?

琉生が優しい言葉を掛けると
排泄を躊躇していた風斗は安心したのか
限界だったのか排泄を始めると

琉生がそう。いい子だね。と風斗の頭を撫でると風斗は

辛いのか、兄弟と言えど
排泄を見られている恥ずかしさ
からか涙を溢し

大丈夫…僕、風斗くんの側に居る。
だから泣かないで…?




ようやく落ち着き、まだ熱が高い風斗をベッドに寝かせ、薬を飲ませてやると

黙り込んだままだった風斗が
…ごめん。と一言呟いた

僕なら平気。
風斗くんが辛いの嫌。

誰でも失敗、ある。

ゆっくり休んで、また風斗くんの髪
アレンジさせてね。

薬が効いてきたのかうとうとし始めた風斗は
ありがとうと消え入りそうな声で
一言だけ言うと眠りについた


風斗くん、僕にもっと頼って…?
強がりな風斗くんが僕を頼ってくれるの
嬉しいよ…

だから、無理しないでね…

……チュッ…

琉生は眠る風斗の額に優しくキスをした

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