小説

□あたたかい…
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いつもと変わらない朝のはずなのに
僕は少し違和感を感じた。

身体が重い…

起きるなんて容易いことなのに
今日はとても辛く感じる。

学校に遅れる、早く起きなきゃ、と思うのに
身体は全然言うことを聞いてくれない。

いつもより時間がかかったが
何とか起きることに成功し制服に着替え、
リビングに向かう。

リビングに行くともうみんな揃って
朝御飯を食べていた。

祈織、おはようございます。
今、御飯の準備しますね。

と僕に右京兄さんが言う。

…おはよう。今日は朝御飯要らない。

右京兄さんには悪いけど
今は食べる気分になれない。

何か飲もうと冷蔵庫に向かおうとすると

要兄さんが
祈織、顔色悪いよ?平気?と声をかけてきた。

要兄さんの言葉に兄弟みんな反応して
僕を見る。

ほんとだ少し顔色が悪いね。身体、辛くない?
と雅臣兄さんが僕に近づく。

僕は辛いけど休むわけには行かなかったから
雅臣兄さんの手が額に触れる前に

大丈夫だよ、それじゃあ行ってきます。
と言ってその場を離れた。

リビングを出た後、凄い目眩に襲われ
僕はその場にしゃがみこんだ。

祈織っ!!

遠くで誰か叫んでる…
この声は要兄さん…?

僕の意識はそこで途切れた。



冷たい感覚に僕は目を覚ました。
そこは学校ではなく、僕の部屋だった。

目が覚めたんだね、良かった。

聞き覚えのある声がする方を向くと
そこには要兄さんの姿があった。

何で…要兄さんが此処に…?

もしかして覚えてない?

祈織がリビングを出た後、心配で外に出たら
祈織、倒れてて、凄い熱があってさ、

雅兄に見てもらったら
ただの風邪が拗れただけだって。

安静にしてればすぐ良くなるってさ。

そうか…僕は…倒れちゃったんだ…
僕をここまで運んできて看病してくれた
要兄さんに申し訳ないな…

要兄さん、ごめん…

祈織が謝ることないよ、
早く良くなると良いね。

と要兄さんは優しい言葉をかけてくれた。

でも、無理のし過ぎは駄目だよ。
祈織は勉強にバイトに…色々頑張りすぎだよ。

ちゃんと休まないと。
あと、御飯もちゃんと食べること。

母さんみたいに過保護なところもあるけど
僕はそんな要兄さんのことが
好きなのかもしれない…

目を閉じる前に見えたのは要兄さんの優しくて温かい大きな手だった。

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