自由の翼

□シアワセチガイ
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飲み物を飲んだジョッキやグラス、口づけた頬や首筋、唇にあてた指、私の唇の触れた場所がすべて赤に染まっていく。それが面白くて、楽しくて、私がここにいるという証明のような気がして無性にうれしかった。
兵士に“女らしさ”は必要ない、という人もいる。たしかにその通りだと思う反面、私は、私たちは所詮女なのだと思う。少しでも綺麗に見られたいと願ってしまうのは女の本能ゆえのことだろう。

「パトルーシュカはいつでもきれいね」

自室のベッドの上でマグカップを傾けるペトラさんの一言に、本棚に身体を向けていた私は顔だけを後ろに向けた。「突然どうしたのですか?」と
自分で言ってから私は彼女は何か話したいことがあるからミルクを二つもってこの部屋に来たことを思い出した。
三つほど年の離れているペトラさんは私にとっては妹のようで、ペトラさんは私を姉のようにたより、こうして時より相談を持ちかけてくれる。

「リヴァイさんですか?」

「違!!」

「即答する所が余計に怪しいですね」

「パトルーシュカー!!」

真っ赤になったペトラさんが私を睨み付け、「別にそういうことじゃないんだってば!」と赤い顔で付け加える。ペトラさんがリヴァイさんに思いを寄せているのは間違いないと思う。ただの尊敬と、異性としての好意の視線は少しばかり変わってくると私は身をもってしっている。
なにも恥ずかしがることはないのに、ペトラさんは自分の中の気持ちを否定し続けている。それは相手が“人類最強”と呼ばれる男だからだろうか、それとも心臓は公に捧げたものだから、などという理由なのだろうか。
兵士になったその日に心臓は公に捧げなくてはならない。だけれど何も心や命を捧げろとはいわれていない。屁理屈かもしれないが、心臓と心、命は別物だと思う。

「ペトラさんからみたら私は愚か者でしょうか」

「え!?」

「いえ、冗談ですよ」

くすり、と笑ってみればペトラさんは「冗談に聞こえないんだってば!」といい、マグカップの中身を一気に煽った。
もしもペトラさんが兵士は恋などしてはいけない、と思っているのならば私はどうなのだろうか。ミケを慕い、愛し、私の心は彼に捧げているも同然だ。

「私は兵士であっても誰かに心を向け、預けることは許されると思っているのですよ」

「...それは...、」

「もちろん考えは人それぞれです。ですが...ーー」

ーー常に女として着飾ることは許されるのではないのですか?
そういった私は本棚の奥にしまってある口紅を手に取り、ペトラさんの飲み終わっているマグカップの中に
落とした。

「せめて、綺麗な死に顔を見せたいじゃないですか」

「だからもっと冗談に聞こえることをいってってば」

「現実、ですよ」

ペトラさんは顔をしかめ、それからすぐに笑顔を浮かべた。そして「それでも私はいち部下として兵長の傍にいれるだけで幸せなの」と言って本当に幸せそうに微笑んだ。


(彼女にとっての幸せを私は理解できそうで、できなかった)

☆★☆

ガールズトーク!!
進撃世界では(男が多すぎて)できないものが書けた!!ということでやたら満足できてます(笑)

ペトラの幸せは一緒に戦って彼のために死ぬこと、パトルーシュカの幸せは彼と生きること。人それぞれだけど、パトルーシュカにはペトラの考えは悲しいって思うんですよね。この場合パトルーシュカのほうが一般論になりそう。まあ、二人は兵士なんですけど。
そう思うと兵士って悲しすぎますよね。心臓を捧げよ!っていろんな意味にとれるから、みんな考え方が違っていいと思うけど...

パトルーシュカの部屋には本がたくさんあればいいと思う。読めないけど置いとくって感じで壁外で拾った本とか(笑


Sunkus🐥

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