やじすず(長編)
□隣のお姉さん1
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「おはよう。愛理」
「あぁ、おはよ。まいちゃん」
「どしたの?元気ないね」
「あぁ、元気ないってほどじゃないけど、彼氏と別れた」
舞ちゃんのえぇーっという声が教室中に響き渡る。
みんなからの視線が集まって気まずい。。
「ちょっと、舞ちゃん声大きいよっ」
「ごめん、でもだって付き合ったの2週間まえくらいじゃない?」
「1週間だね」
「なんで?振られたの?」
「いや、振ったの」
そこまで言うと舞ちゃんは呆れ顔になった。
「愛理。これで何人目よ」
「…覚えてない」
「愛理そうやってすぐ忘れたふりする。いい加減大人になんなよ、もう高2なんだからさっ」
「…まだ高2だもん」
ボソッと反論するとほっぺをつねられた。
「で、なんで別れたの?また理想が高すぎ問題ですか?」
「別に理想高くないよ?でもなんか違うんだもん!」
「愛理の理想は何でそんな高いのかなぁ。そんなじゃ何人と付き合ったって上手くいかないよ?」
だって仕方ないじゃん。
舞美ちゃんに敵う人がいないんだよ。
舞美ちゃんは私の隣の家に住む大学生のお姉さん。
昔から年下の私を妹のように可愛がってくれてた。
美人でスポーツ万能で優しくて努力家で、ちょっぴり天然で。
私は舞美ちゃんが大好きだったから、女同士は結婚出来なくて、舞美ちゃんがいつか誰かのものになるかもしれないと知って寝込んだほどだった。
だから、舞美ちゃんより良い人を見つけるために、告白された人と片っ端から付き合ってるんだけど、ダメだ。
舞美ちゃんの良さを再認識させられるだけだった。
帰りにわざわざ待ち合わせて帰る煩わしさもなくて楽だなぁ。
彼氏ってだけで極力一緒に居ようとするの疲れるし。
舞美ちゃんちに行こうかなぁ。
「いらっしゃい」
出てきたのは舞美ちゃんのお母さん。舞美ちゃんみたいに美人でふわふわしてる。
「舞美ちゃん居ますか?」
「舞美まだなの。もう少しで帰ると思うから、あがってて」
家族ぐるみの付き合いだから、本人がいなくても部屋に通してくれる。
「舞美ちゃんの部屋、いつ来てもキレイだなぁ」
舞美ちゃんの使ってるクッションを抱きしめて、舞美ちゃんの匂いに包まれて安心する。
「…なんか私変態みたいだ。。」
ほんとは舞美ちゃん自身を抱きしめて、舞美ちゃんの匂いに包まれたい。
そんな想像するだけで、男の子とデートした時よりドキドキする。
そんな事を考えてるとドアが開いた。
「愛理、来てたんだね!」
「あっ、ま、舞美ちゃん!」
「なんでそんな慌ててるの?あっ、さてはなんかイタズラしたな?」
「してないよ!なんでもないよ!」
まぁいいやと言って、舞美ちゃんは私の横に座った。
「愛理さ、また彼氏変わった?」
「えっ?というか昨日別れた」
「そうなの?おととい見かけた人かな?前に写真見せてもらった人と違かったから」
「あぁ、写真見せたのは前の前の前の彼氏かな?」
舞美ちゃんに肩を掴まれてビクッとして横を見ると、そこには舞美ちゃんの真剣な顔があった。
「愛理。もっと自分を大事にしなきゃダメだよ?」
「大事にしてるよ?キスまでしかしてないし」
「そういうことじゃないよ?本当に好きな人と付き合わなきゃだめだよ。」
「そんな諭すようなこと言わないでよ。。私だってそうしたいし、わかってるよ。。」
「それなら、ちゃんと」
「じゃぁ、舞美ちゃんが私と付き合ってよ」
「えっ?」
「私がずっと好きなのは舞美ちゃんだけだよ!」
ついに言ってしまった。
もう後戻りできない。
ずっと言わないつもりだったのに、舞美ちゃんが悪いんだから。