やじすず(短編)
□近くで
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「愛理ももうすぐハタチかぁ…」
「ん?どうした、やじ、急に」
「いゃ、なんかさぁ、こぅ大人になったなっていうか…」
「わけわかんないっ」
そう言って、はにかむ愛理は昔と何も変わらない。
でも、愛理と対峙している時、急に、無性に淋しくなる時がある。
今もこうしてロケで泊まっているホテルで二人っきり。
さっきまで、5人で騒いでいた時は全く思わなかったのに。。
「ん〜、私もわかんないっ!」
ベッドにバタンと倒れこむと、やじがわかんないなら、愛理はもっとわかんないよ〜って、文句が聞こえてくる。
なんだろう、この気持ちは。
あぁ、きっと…
「…置いてかれたくないの…かな?」
「え?」
「遠くに行かないでって思ってるのかも…」
「舞美ちゃん…」
そう言うと愛理はグッと、私の顔を覗きこんできた。
「それって、メンバーみんなに思うの?」
「えっ?えーと、違うかなぁ。愛理にだけ思うかな。」
「なんで?」
「え?」
「だから、なんで私にだけ思うの?」
あ、愛理さん、顔が近いです。
顔怖いです。。
「…えっと、なんででしょう」
その言葉を聞いて、今度は愛理の方がベッドに倒れこんだ。
「もぅ、やじは意地悪だ。」
「え?なんで?」
「もういいよ。」
そう言って、背中を丸めていじけてしまった。
どうしよう。。
「愛理〜、愛理さ〜ん。」
背中をツンツンしてみるけど、反応なし。
これは完全なるいじけ愛理だ。
昔も私に構ってもらえなかった時とか、こんな風になってた時あったっけ。
それを思い出したら、無性に愛おしくなって笑えてきた。
「ちょっと、舞美ちゃん笑ったでしょ!」
そう言って振り返った愛理のほっぺが膨れてて、またまた笑えた。
「なんで笑うの!私…うわっ!!」
本能のまま愛理を抱きしめる。
「やっぱ、かわいい。ずっっと近くにいて欲しいなぁ。」
「…やじがそういうなら愛理は……」
私がギューっと抱きしめている下で愛理がごにょごにょ言っている。
愛理の成長を私が10年以上、一番近くでみていたように、この先の10年も一番近くで私がみていたい。
それを当たり前にする未来が欲しい。