銀魂

□ぱちん
1ページ/1ページ



ぱちん。

僕の中で、幾度となく繰り返される。

朝の澄んだ空気、炊事場に溜まった食器、トイレの芳香剤の匂い、知り合いのないスーパーのレジ、鍋の音。

―――銀さんの背中。

それでも僕は、この音の正体を知ることはない。
いつから僕の中でこの音が繰り返されるようになったのか、それさえわからないのだ。
もしかしたら、僕がそれに気付いていなかっただけで、それは、僕という存在が出来た時から今までずっと鳴り続けていたのかもしれない。

とにかくわからないのだ。

僕はこれからどうすればいいんだろう。

ぱちん。

「あ、また」

今の何からの音?
リビングを見渡すと、丁度銀さんが帰って来たところだった。

「またって何が"また"なの、新八君?」

「なんでもないんです。ただの独り言ですよ。銀さんだってよく言ってるでしょう?ジャンプ読みながら、"あー今週のギンタマンおもしろくねぇなあ"って」

「バッカ、あれは独り言じゃねぇよ。感想だ。大体お前は――」

ぱちん

ぱちん

パチン

「――銀さ」



『あーあー、まぁた、こんなカッコで寝て…。風邪引いても知らねえぞー』

『すー、すー』

『……………、』

ぱちん。

『…ん、銀さん…?おかえりなさい』

『お、おう。たでーま』



「、銀さん!」

「あ?なんだ新八、姉ちゃんが恋しくなったのか?」

ぎゅ、



ぱち

ぱち

ぱち

「…ちょ、コラ、あんま引っ付くな。それでなくてもあちーのに」

ぱちん。

「銀さんだったんですね」

「何が」

「銀さん、この前、僕が畳で寝てた時、ちゅーしたでしょう」

「………、」

「僕、ずっと、すごく綺麗な夢だと思ってました」

「でも、やっと思い出せたんです。この音が何なのか」

「僕、銀さんのことが――」


好きです、好きなんです。

はじめて出会ったあの日から。


「先に言っちまうのは罪だぜ、新八君? せめて俺に、不意打ちの罪滅ぼしくらいさせてくれてもいいんでない?」




「はじめて逢った時からすきなんです、」

「どうしてくれんだコノヤロー。」


「本当ですね。どう責任とってくれるんすか」

ぱちん。

僕はいつも、この音を聴くと思い出す。
初夏の暑い陽射しと、緑の匂いと、扇風機の心地好い風と――…


『新八、愛してる』


---
おひさしぶりです。

説明ないとまったく訳がわかりませんね;
もともと漫画用に書いたものなんです。

銀さんは新八への想いを抑え切れなくなって、新八が眠っているのをいいことに、ちゅうしてしまうんです。
その時気休めに(銀さん照れ屋だから、)近くにあった扇風機をつけて、いろいろ誤魔化してしまおうとする訳ですね。

でも実は、新八は、銀さんが帰ってきたあたりで起きていた。と。

しかし、新八は新八で寝ぼけていたので、それを夢だと思い込んでいたし、何を言われたか、されたか、忘れてしまっていたんです。

でも新八にとって事件だった。
(好きなひとにキスされた上、愛の言葉まで告げられたんですから)
だから体にはそのときの記憶が、音が、刻まれていたんです。

わかりづらい文ですみませんでした;;


最後までお付き合いくださり、
ありがとうございました。



2009.5.31

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ