銀魂

□橙色の最期
1ページ/2ページ



ベランダに出ると、江戸の街と空が橙色に染まっていた。
僕は洗濯物を取り込むと籠を抱えて、橙色の江戸の街に背を向けた。

其処に、銀さんが立って居た。

「神楽ちゃん、もうすぐ帰って来ると思いますから、そうしたらご飯にしましょう」

何時もより少し優しめに微笑んでみる。
それなのに銀さんは早起から一度も目を合わせてくれなくて、

「銀さん?」

何かあったんだろうか?
否、この人はこんな風に、あからさまに感情を態度に出す人じゃない。

だとしたら僕だ。

僕がこの人に対して何かをしてしまったんだ。

それは―

伏せ目勝ちな視線は、何処か冷たくて、考えれば考える程不安になって行く。
そんな時、銀さんが静かに口を開いた。

「お前 どうせまた、多串として来たんだろ?」

カタン

真っ更な着物達が洗濯籠から一斉に溢れた。

罰の悪そうに背を向けて、此所を離れようとする見慣れたその大きな背中には、初めて 拒絶の文字が張り付いて居た。

、違う。
離れないで。

「銀さん、僕は…!」
「…―っ、」

必死に掴んで引き留めた背中の着流しを握り締め 震える手も、僕の是溢れ落ちる想いも 噛み締めた言葉も、



何て軽卒でしょう。



(言い訳しようなんて 決して思うな。)



静まり返った夕暮れ時のベランダから、橙色の陽が射し込んで、二人の陰を赤く染めて居た。



(後戻り、出来ない。)











次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ