銀魂
□紫陽花
1ページ/1ページ
「土方さん、見てください。綺麗でしょう?」
「………ああ、」
志村は腕の中を紫陽花で一杯にして、愛しそうに目を細めて微笑んだ。
辺りは明るかったが、空は厚い雲に覆われていて、今にも滴を落としそうだった。
つい早急、紫陽花を貰うまでは、出掛け際に干した洗濯物がどうとか言ってたくせに、そんなこと、すっかり忘れてしまったように、夢中で青色の紫陽花を見つめている。
単純なヤツだ、と、つい笑ってしまった。
「紫陽花って、土に含まれるアルカリの強弱によって花の色を変えるらしいですよ。だから僕が死んだら、この紫陽花の下に埋めてほしいんです。」
「は、何言ってやがる。馬鹿馬鹿しい。お前はまだ死なねえだろ」
「あはは、そうですね」
志村は自分の血を吸って花開いた紫陽花が、どんな色をしているのか知りたがる。
そんなもの知って、どうするつもりだ?
第一てめえが死んでるんなら、その色を確かめることなんか出来ねえだろ。
頼むから、寂しそうな顔をしないでくれ。
「でも、土方さんはそれを見れるでしょう」
「そうしたら、僕が死んでも、土方さんは僕を忘れないでいてくれるでしょう」
「どこにでもある紫陽花じゃだめなんです。僕の色じゃないと……」
「あなたは僕を忘れてしまう」
時間とは、いつの間にか流れて行くものだ。
あれから二週間後、志村は死んだ。
病気だったらしい
葬式の後、姉ちゃんが、志村の部屋の掃除をしている時、俺宛ての手紙を見つけたらしく、わざわざ届けに来てくれた。
そこには確りした細い文字で、
『土方さん、もしあなたがこの手紙を読んでいるならば、僕はもう死んでしまっているんでしょうね。(中略)―僕は最期にあなたにあいたいです。あなたの顔をみたいです。あなたの傍に居たいです。だから庭の紫陽花をあなたの傍に植えて下さい。』
『紫陽花の色は白がいいです』
『土方さん、僕はあ を いし ま 』
と綴られていた。
最後の文字は滲んでいて、読み取れなかった。
それから一年後の梅雨が来た
自室の前の庭には、一杯の紫陽花が咲き並ぶ。
志村の遺骨を分けて貰って、そこに、あの時、愛しそうに見つめていた紫陽花を植えた。
また梅雨が来る。
そして、志村新八を、思い出す
紫陽花の色は、白
---
今年は梅雨入り遅いですね
新八は地球外不治の病だったんです
結局、土方さんが新八の死を告げられたのは、新八が死んでから三日後のお昼。
よく晴れていたと思います
土方さんは、最近志村に会わないな、くらいしか思ってなかったから、最初信じてなかったけど、お妙さんの持ってきた手紙を読んでいるうちに、ああ、もう新八はいないんだ と理解して、愕然とするんです
紫陽花を植えたのは、土方さん自信、新八のことを忘れてしまいたくなかったから。
本当はそれほど、新八のことを想っていたのに、最期、一緒に居てあげられなかったことを、すごく悔いているんです
でも紫陽花は白く咲いた
一つだけ、新八の願いを叶えてあげられた土方さんは、救われたのでした。
死ネタって涙出てくる
2009.6.11