銀魂

□眠れぬ糖尿病
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「…っ、またか……」

もう此れで何度目だ?
うなされて居た訳では無い。
只、目が覚める。
何度も、何度も、繰り返し。
逸その事起きて居ようか、なんて考えるが、直ぐに睡魔は襲って来て、

(んだよ一体…)

眠れないもどかしさに苛々が募ったが、どうする事も出来ず目を閉じた。


***


「おはようございます、銀さん」

昨日と同じ時間に万事屋を訪れた新八は、神楽を起こした後、俺の部屋の襖を開けた。

何時もと違う優しい声音と、敷居と襖の擦れる音。

結局深い眠りに着く事が出来なかった苛立ちが淡々と募る中、何と無くその声と音だけが、心地好く耳に残った。

「…銀さん…、今日は一日寝てても構いませんよ」

辛そうに伏せられた顔、微かに震えた声。
なんでいきなりそんな顔すんだよ。

「おいおいどうした新八くん、何時もなら無理にでも起こすじゃねぇか。何企んでんだ?優しくしてやるから給料払えってか?其れとも――」
「知ってるんですよ…!!最近銀さん、ちゃんと眠れて無い事…」
「―!?」
「テレビで観たんです…糖尿病になるとちゃんと眠れ無くなるって…っもし、かしたら、銀、さ…っ」

――ぽつ、ぽつ…

新八の大きな瞳から溢れ落ちた雫がポツポツと袴に染みを作った。

(何、泣いてんだよ…)

「…あっ、れだけ…っ…甘いも、の…うぐっ、控えろって…言ってたのに…銀さ…ヒクッ、聞いてくれなっ…いから!」
「…新八、」
「もし…ッぎ、さんがっ…糖尿病だったら…ぼ、く…ぼく…っ」

目の前で、聞き訳の無い子供の様に泣きじゃくる、俺を心配してくれた愛しい人…
嗚呼…俺はこんなにも愛されてるんだな、と、自惚れそうになる。

思わず緩んだ口元を見られる前に、そして、一向に泣き止まぬ新八を落ち着かせる為に、頭から包み込む様に抱き締めた。

「天下無敵の銀さんが糖尿なんかになるわけねぇだろ…」
「でも…」
「少なくても新八が俺の側に居て、ずっと糖分管理してくれたら糖尿病なんてぜってぇーならねぇよ」
「銀…さ…っ」
「兎に角俺は糖尿病じゃありません〜…だから、もう泣くなよ?」
「は…い、」

腕の中の新八の顔を見ると、うっすら目の下に隈を作って居た。

(そんなになるまで俺を…?)

「銀さん新八が添い寝してくれたら寝れる気がするんだけどなぁー」

上を向いて冗談ぽく言った。
まぁ本気なんだが。
様子を伺うべく再び新八に視線を落とすと新八はこくりこくりと眠りへの船を漕ぎ始めて居て、其の様子を見て居ると、早起までの苛立ちがまるで嘘だったかの様に、ゆっくりと瞼が重くなるのを感じた。


***


「新八なにしてるアル、銀ちゃん起こしたならさっさと飯作るヨ――…」

其処には寄り添って眠る二人の姿が在った。

「…――銀ちゃん、新八、おやすみなさい」

ゆっくりと閉じられた襖と敷居の擦れる音が、規則正しい寝息と混ざり合い、二人の穏やかな時間は夕方迄続いたとか、続か無かったとか、




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いつかの日記から。
確かニュースかなにかで糖尿の人は夜中なんども起きたりなんたらしてしまうと聞いて…
神楽はいい娘!



2008.6.10

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