RED MOON1
□傀儡。
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「…何をしているのだ、貴様は」
「クッ…!今宵のダイアナを誘いに来たのさ…」
ソファに悠々と脚を組み、我が家の如く振る舞うゴドーに御剣は苛立ちを隠せず、眉間に皺が浮かぶ。
その後ろを通り抜け、デスクに向かおうとしたのだが……
「――Honey…危な気な指で…何をしてきたんだい?」
褐色の手が、御剣の手を掴み…その甲に唇が落とされる。
「…警視庁記者に局長代行としてのコメントを伝えてきただけだ……離せ、神ノ木。」
「離しても、出口は何時も同じさ…ボウヤ」
一気に振り払われた細い手首を追う様に、ゴドーは立ち上がった。
不敵に口端を上げ、御剣の前に立ちはだかりニヤニヤと見下げる。
「クッ…!覗き穴は塞いでおいてやったぜ?色気ばかりのデガバメ野郎に愉しませたくねェからなァ…」
「……貴様の肴になるつもりは毛頭ない。帰宅せよ。」
「あァ――オサカナは…網の中さ、ボウヤ…」
「――ぐ……ッッ!!」
後ろ髪を掴まれ、突き刺す様なキスは荒々しいものだった。
呼吸すらままならぬ程に吸い上げられる舌。
こめかみに当たる奇妙な機械の冷たさばかりが矢鱈とリアルに感じる。
酸欠に墜ちる手間で開放される舌と、離れる唇。
崩れそうな身体を支える腕。
それは既にジャケットを主人から剥離し、腰のベルトを引き抜くに至っていた。
意識へ酸素を取り入れる間にソファの後背へと押され…いつの間にか不安定な形のまま幅の狭い背に腰掛けている。
少し身を攀ると、途端にグラリとのけ反ってしまい…それをゴドーは愉快気に支えていた。
「き…貴様……ッ!!」
「あんな最低のKissでボウヤを抱きたくねェな……」
瞼に唇を落とし、ゴドーは切れ長の瞳に囁くように呟きかけた。
その度に珈琲と舶来の香りが熱い息と共に注がれ、どうしても目は伏せてしまう……。
「嘘まで溶かす最上のKissで……抱かれてくれよ」
「ふざけ……!ン――んッ…ッ――…ゥ……!!」
口内の全てを確かめるような長いキス―――ゴドーはそんな口付けを好む。