RED MOON1
□銀糸
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車両へと近付くと運転席のウインドウが開き、夜風に乗ったジタンの香りが身体に纏わり付く。
「クッ!…お迎えに向かうつもりだったんだがなァ…」
「使役の為遅れた。迅速な職務遂行、感謝する」
「……隣、空いてるぜ?」
ゴドーは指でジプシーを揉み消すと、助手席のロックを外し車内へと入るよう促す。
余り気はすすまなかったが……少しばかり後ろめたさの様なものもあり、無言のままその車内へと身を滑らす。
暗闇の中に光る朱が、その横顔を淡く写し、真一文字に閉じられた口元が動き出すのに多少の時間を要した。
「……どうすればいい」
「――――?」
唸りを帯びる獣に似た呟きをゴドーは漏らす。
「どうすれば……その鎖を引き千切れる?」
「……………。」
怨みを孕んだ様に鈍く低いその声に、御剣は応える事が出来ずに沈黙したまま。
「……クソが…!」
「――!!神ノ……痛ゥッ!!!」
唐突に車輌を発進させたゴドーは、そのまま闇を走り抜ける。
その急発進の際に頭部を少し打ち付けて、クラリと視界が歪む。
「――貴様!職務を放棄する気かッ!!」
再三の罵声を投げ掛け制止を唱えたのだが、ゴドーにそれは届かず。
パトランプの光を闇に放ちながら、何処へ行くとも判らぬ道をひたすらに走り続けたのだった……。
疾走の終着点も、やはり闇の中だった。
「ッ…う――うあッ…!!」
助手席のシートは倒され、身体を二つ折りにされたままシートベルトで固定されている。
剥き出しの下肢と、毟られたシャツを残した上半身。後部座席のベルトで両手首を拘束され、自由は完璧に奪われていた。
車内灯に照らされた秘孔に褐色の指が激しい送出を繰り返す。
「全部掻き出してやるぜ?、オレのボウヤ……」
「あ…うッ――くぅ…う…ッ…!!」
「――吐き気がするぜ…」
ジュブジュブと掻き回される水音と共に溢れるのは――支配者の遺した欲望の白。
それを掻き出すようにしたいのか、三本の指の腹は壁をグイグイと押し付けながらそれを繰り返す。