BLUE CAT
□添い寝
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―――PM 7:00
某ホテル室内
恐ろしい程時間キッチリに『会談』の場に連れてこられた。
突然事務所の扉が開いたかと思ったら、もう顔見知りのSP二人が現れて。
異義を申し立てる暇を与えて貰えないままに、コートを着せられ、戸締まりをもして貰い――半ば護送される囚人みたいにして此処へと来たのだった。
「やあ!元気にしてた?なるほどちゃん!!」
「は……はぁ……。」
「そう!それは良かったねぇ」
異様に広い室内の豪華さに、それだけで腰が引く思い。
いや、それ以上に、何故わざわざホテルの一室を利用するのかが解らなかった。会談なら、別に下にあったカフェ辺りでも問題ない筈なのに……。
更にツッコませて貰えば、何故かレストランと同じようなテーブルが置いてあって、皿にナフキンに燭台という事になっているのか、だ。
(ブルジョアってやっぱり……思考の先が分からない…)
奇妙な冷汗を額に滲ませて、その室内の装飾品をチラチラ見ていると、ソファにゆったりと腰掛けていたクライアントが近寄り、僕の手をやんわりと握り締めた。
「さ!仲良くディナーにしよう!」
「……え??…いや、あの…会談じゃな……」
「うん、満たされながら満たすオハナシするんだよ。それがボクの会談!」
「それって『会談』じゃなくて『会食』なんじゃ……わ!わわわ!!」
そんな事は全くお構い無し、といった調子でグイグイと引きずられるようにテーブルへと。
座ってよ、と言われ。
座らなきゃまた――先週と同じ事になりそうな気がして、仕方なくテーブルへと付いたのだった。
銀の燭台に乗る蝋燭の灯が、少し暗めの室内の中ゆらゆらと揺れ動く。
対面の席についたクライアントは、やっぱりニコニコと僕を見て微笑んでいた。こんな僕を見て何が楽しいのか分からない。
この人自体が、不思議の塊みたいなものなのだけれど……。
「じゃ、始めよう!ハイ、乾杯!」
「…あ、…はい、カンパイ……」
いつの間にか入室していたボーイが、グラスに赤いワインを注ぎ込み、オードブルを並べてゆく。
何故の乾杯なのかも解らないまま―――またもや一席を持つ事になってしまったのだった。