BLUE CAT
□仔猫に首ったけ♪
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―――地裁カフェテラス
「美味しい?なるほどちゃん?」
「え?…はぁ、美味しい…です」
だから何故、こうも巡り会わせが悪いんだと…額に汗しながらクラブサンドを頬張っている成歩堂。
実際、地裁のカフェのクラブサンドは…余り美味しいとは言えなかった。
前はそんな事は思わなかったのに…と思いつつも、口は自動的に動く。
ゴドーや御剣が自分を連れ行く店の殆どが三ツ星的な所であったため、パンの質だとか挟まれた肉も野菜も…天地の差程の開きがあったのだ。
ブルジョアな二人に囲まれていると、どうもその辺りの均衛が取れなくなっているらしい。
「ボクは余り好きじゃないなァ…ここの食事。ホラ、公的機関の店って、美味しく作る人雇わないから。それに、ミンナお腹満たせればイイって人ばっかりだしね」
「そ…そうですね……」
「なるほどちゃんはホントに美味しいの?、それ?」
ジッと下から覗き込む様に見られ、食道通過途中のものが逆流しそうになり、目を白黒させる成歩堂。
厳徒は、そんなクリクリと動く丸い目を愉快気に見てやはり満面の笑みを浮かべ実に上機嫌そうだった。
「ま、イイや!今度美味しいトコに行けばいいだけだしね!」
「!!………ゲホッ!」
『今度美味しい所に行く』……つまりこれは【拉致予告】。
急でしかも強引なそれに、成歩堂は二度に亘る噎せを繰り返して涙目になっている。
……いや、実際、泣いていたのかもしれないが。
「こっ…困ります!それ!!」
「ン?何故困っちゃうのかな?」
「えっと…それはですね、つまり……」
「ああ!そっか!そうだよねぇ!!」
急に何を納得したのか、ポン、と柏手を打って言葉を遮る厳徒。
…それをただ唖然とする成歩堂。
周囲の客達がヒソヒソと、何かを囁きあっているのが聞こえてきて、話しは益々進めづらくなる。
(うぅぅ…やっぱりこの人は苦手だ……)
外野の人間達までも上手く活用して、己のペースに巻き込む……そんな術を、人生長けた権力者は惜しみなく成歩堂に見せ付けていた。
もはや冷汗から油汗になった成歩堂を観察しつつ厳徒は、右手の人差し指にリズムを乗せ動かしながら、その閃きを説明し始める。