素敵な頂き物小説
□Book on love
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-Book on love-
本を読んでいた。
恋愛物では無かったけれど、素敵な恋の物語。
未来から来た恋人が、主人公を困らせたり励げましたり、笑わせたり、呆れさせたり、家族みたいに優しく寄り添って、最後はさよならする話。
可愛い恋人は本当にふざけたやつで、文章は乱暴で、短くて、ちっとも甘くない物語だった。
面白かった。
最後の切ない展開を知っていたけれど、それを感じさせないふざけっぷりだった。
貴方と笑いながら、ページを捲った。
真ん中辺りのエピソードが終わる頃、貴方が
「アンタ、みたいだな」
と言った。
愛する人に必死に追い縋る未来から来た恋人。
笑って誤魔化したけれど、その後のエピソードが全く頭に入ったこない位、僕は混乱していた。
ページを捲る指が無意識に早くなる。
気障なセリフと仕草で、貴方は僕のスピード違反をたしなめた。
制した貴方の指が、僕の手の甲に触れて…暖かい指だった。
貴方の指に透明な水玉模様が描かれたのを、歪んだ視界で僕は見た。
紙の上の恋人は、バカみたいに笑ってる。
本当にどうでもいいページ。
―泣いてなんか、いないです。
言われる前に、鼻水をすすって、
「花粉症なんです。セイタカワダチソウって知ってますか?凄くツラいんですよ」
彼を好きになって、最近富みに泣き虫になった僕は、言い訳の為だけに覚えた花の名前を口にした。
今は季節じゃないから、本当は咲いていないけど、見逃してください。
一所懸命憶えてたんです。
いつ泣いても良いように。
まさか、こんなところで泣かされるとは思ってませんでした。
もしかして、貴方は知ってるんですか?
僕の気持ち。
貴方が指差した恋人のセリフ、本当に僕みたいでした。
僕を憎んでいるはずのの貴方が、余りにも正しく、僕を理解しているような気がして、嬉し過ぎて、哀しくなりました。
僕は、今、言葉にして伝えてはいけない気持ちを貴方に抱いています。