RED MOON1
□Advantage
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§5『Advantage』
幾度となく繰り返される哀しみの連鎖の中にあっても路は消える事はない。
留まる事は罪だと信じ、走り続けた荊の先に存在いたのは、光ではなく『絶望』であった。
既に前進する理由さえなく―――御剣は無限とも等しい空虚な明日を待っているに過ぎない。
(成歩堂………)
夢に疲れ果て、その名ばかりを心は呟き続ける。
押さえ付けられるか……それとも死ぬまで逃げるか―――彼は前者を選択し、既にこの『闇』へと囚われていたのだった。
互いを慰め合う、あの場面を遺して。
(成歩堂………)
散りゆく桜は涙を隠し、無情な時が過ぎてゆく。
再び、祈るだけとなった儚さを。
ただ、それだけを残して――――。
「……ウン、手配シテくれてイイ。あと、葬儀屋への連絡とかも忘れずに、ね?」
「うッ…ァ……ッあ…ンンンッ―――!!」
「ああ……キニシナイでイイよ。じゃ、ヨロシクね―――」
最近少し鬱気味な彼とこうしてアソんでいる時でさえも、プライベートな機械はコールサインのワルツを奏でて、ボクを呼んだ。
春は色々と面倒なコトが多い。財界の模様変えや、不要なモノ達の調整依頼が数多くある。
箱庭も中々愉快なコトと成りつつ有るけれど、ソレばかりを眺めている訳にもいかない。
―――そんな現状でチョッピリ苛々していたせいか、普通もより強く腰を打ち付けていた。
実に呆気なくシーツの海へと浮かぶ彼を引き上げて、顔が見えるようにコチラを向かせる。
長い前髪の奥に、切れ長の目が虚ろな懇願を醸しながらボクを見た。
でも、その瞳には『服従』の色はナイ。
【狩魔】というアイデンティティの壁は、そう簡単には崩せない。
併せ持つ『御剣 信』の強固な一念が、更なる障壁となって、イル……。
「ソレは無抵抗主義ってコト?イイ選択じゃあ、ナイなぁ……」
「ンン…ッ……ァ…アッ……」
「まぁ、神ノ木ちゃんは喜ぶだろうケドさ……ボクはソレだけじゃもう、満足しナイよ?」
太腿に手を宛て、深く小刻みな送出を繰り返しながら、彼の下のクチから出入りする醜いモノを眺めていた。
ネットリと絡み付くような刺激では物足りナイ……さて、どうしようかなァ―――と。