RED MOON1
□華蝶
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―@2『華蝶』―
(ヘンな形だなァ…蝶々なんだろうケド……)
時折集まる様々な『押収品』は見慣れぬモノが多かったから、それらの使い方がハッキリとは解らない。
ただ、それが肉体を辱める『玩具』である事は明白なのだけれど。
矢鱈とご立派な男性自身を象ったモノや拘束具、淫性ドラッグから貞操体 まで……まぁイロイロと考えるねぇ、と。
淫に塗れたそれらを手に取って、何か面白いものはないか捜していた。
県警の地下深くに眠るそんな押収品の『倉庫』。
調査が終り、罪が確定してしまえば何れ処分してしまう物だから、何を持ち去ろうが気付く者などいない。
(コレでいいかな……蝶々なんて馬鹿、みたいだし)
締め上げるリングについた、綺麗な蝶々の飾り。 その可憐さが何となく彼に似合いそうだったから、ソレを懐に忍ばせた。
もし、コレが愉快なシロモノだったならば覚えたての…蒼いあのコにも、使って遊んでみたいと思っている。
(綺麗な蝶々にいたぶられて、どんなカオするのかなァ…)
愉しみは、沢山ある方がイイ。
先日の彼に対する『ペナルティ』を残しておいたのは、そんな理由からだった。
未だ喰われずにボクの網の中で、じっとその時が訪れるのを待っている。
そんな放置の時間もまた、彼にとっては気掛かりで仕方がない筈だ。
露骨にいたぶるよりも、ジワジワと炙りあげるのがボクの趣向。
耐え切れなくて歎く姿が1番キレイだと思う。
(さぁ、戻っておいで?遊んでアゲルから、さ……)
地下の闇から地上へと抜け、忠実な飼い犬と共に車内へと戻る。
ゆったりとしたシートに腰を沈めながら、携帯を取り出し、彼のクリアな声を耳にした。
「ン……30分経ったら、何時もの所にね……」
『分かりました……では失礼致します…』
彼はまた時間キッチリに訪れる筈だ。
ボクに捕食されると解っていても、何事変わらず凛として姿を見せる。
その白い素肌に誘われた蝶が今、ボクの懐に眠っている。
この蝶がキミに似合うとイイ―――そんな想いを胸に、あの一室へと闇を抜けゆく………。