RED MOON1

□その指が解けたら
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―#4
『その指が解けたら』―





「ン!じゃ、このままで……頑張ってね」

「――ッ……は…い」


昨日の宴で、小さくて面白いものを貰った。かなり高度な遠隔操作が可能な代物だそうだ。

最近は掌に乗るくらいのモノが、様々な分野で人気らしい。

市場のマーケッティングに興味はさほどナイけれど。こんな悪戯と呼べる悪意の味は、何時だってボクをワクワクさせてくれる。

だから先ずは、キミに試食して貰って…次にあの碧いコに使いたいと思っている。

天使のような白い肌と美麗なる従順で凛と澄まして見せてくれるかな……


――――御剣怜侍クン。






午後の初頭に行われる公判に出廷する事となっていた御剣は、独り控室にてその資料を再読していた。


(被告人の罪状認否……う…ッ…)


少し身を伏せてしまうと、下肢の中にあるモノが奥へとズレ込むのだ。

その度に吐息が漏れ、眉間が寄ってしまう。
しかし、ソレを取り出す訳にもいかず……なるべく身体の動きを制して、気を落ち着かせようとしていた。


「――!!ンン……ッ!……ふ…ッく……!」


意図をも知れぬタイミングで震えだすそれ。

それには強弱があって。
今、最強震と思われる振動が訪れたせいで、喘ぎが漏れてしまったのだった。


(………う…ッ…)


こんな醜態を見る事に、一体何が満たされるのか……全く理解できない。

あの黒い指先が触れずしても、こうして操られ…ただそれを従順のままに見せる。

一夜毎の辛さを、痛く苦い思いで噛み締めていたあの頃。

縋るものを失った時に、あの哀しみに献上された。

解けぬ事のないように…深く強靭に括られた糸は、何色にも染まらない『無』。

その指先に繋がれ、繰り返される戯れは酷く気を滅入らせた。


(入廷時刻だ……)


従順という名の糸に繋がれた以上……逃れる術は無い。
また、それを断ち切れる想いすら持ち得ては居なくて―――。


内部に『種』を秘めたまま。御剣は、自身を奮い立たせる。

切れ長の瞳に、凛とした光を宿しながら……それに耐え貫く為に。
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