WHITE MOON

□巌徒さんの愉快な一日
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#2―巌徒さんの
     愉快な一日―





今朝1番の接見に訪れた御剣クンは、少し疲れたような顔をしていて。

それが軽い二日酔いのような様子だったから、ボクは見て直ぐにピンときた。


「仕事に飽きた予言者は若くて血の気が多いカラ……」

「は……?」

「……そんな日はつい、瀬戸際からハミ出してしまう、ってコトだねぇ」


提出された書類に印鑑を次々と押しながら、その姿にニッコリと笑い掛けた。

昨日のイジワルの結果は、神ノ木ちゃん言う所の『テイクアウト』だったらしい。

局内でも、たまぁに絡み合う様子を見る事はあるけれど、それは『貪る』といった表現がピッタリだと何時も思っていた。

大概は神ノ木ちゃんの旺盛過ぎるアレが原因。
ボクが御剣クンにほんのチョッピリ火種を与えただけで、若獅子は爆発寸前といった未熟な嫉妬を滾らせていた。


(ポケットは段々深くなってゆくのに、与えられたスリルは徐々に安っぽくなってイクんだろうねぇ――――)


最後の一枚に印鑑を押し付け、万年筆でサラリとサインを施す。

用紙に滲むインクが、毛細血管のようにジワリと広がるのを見て。
また、イタズラを思い付いたのだった。


「ねぇ、御剣クン?」

「―――はい」

「ボクの趣味って、何だか分かるかな?」

「…趣味―――ですか……」


唐突に尋ねたその質問に、御剣クンは少し困惑気味な表情を見せつつも、実に的確な答えを口にした。


「多趣味とお見受けしますので、全ては……」

「そう?でもね……キホンは全て愉快なシーソーゲーム、なんだ」


少し分厚い書類の束を軽く纏め、御剣クンへと差し出す。

どうにか理解しなければという、気真面目に神妙な瞬きが実に可愛いと思った。


(そんなカオするから、ボクに悪戯されちゃうんだよ?)


書類を受け取り、深く一礼する姿を眺め入りながら、ボクは囁くように呟いた。



―――キミへのイタズラ


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