PINK CAT
□チキン
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―#2『チキン』―
――おかしい。
こんな事は、絶対に。
何故、こんな事になってしまったのか。
それすら認識出来ずに、また繰り返される『契約』という名の時間。
今日こそは断ろうとして。こんな事はおかしいと言葉にしていた筈なのに。
白布の海の下の、スプリングがまた、軋む。
「なるほどちゃんの白い血にはね……ホラ、ちっちゃな『理由』がイッパイ入ってる」
吐精したばかりの気怠さの中、黒革にトロリと絡む自身の快楽の証を目前に見せられて、成歩堂は俯く。
他人には見せたくはない、内に秘めていた何かを暴かれ、吐き出させられて、こうして見せ付けられて。
「これがキモチイイ種なんだって、知ってた?…1週間で、なるほどちゃんが溜めたカワイイ『理由』。――ボクは結構、コレを見るのスキなんだ」
「!!……やめ…」
「神ノ木ちゃんもイジワルだからなァ…何もこんなに作らせるコト、ないのにねぇ」
「やだ……ッんン――イヤ……ア…」
未だ余韻に痺れる果実はまた、その黒い掌に包まれて。
吐き出した筈の証が、自身にねっとりと絡み付き…新たな快楽を呼ぶ水音を立てた。
身を僅かによじると、厳徒は嬉しそうに『イイねぇ』と嘲笑う。
何が良いのか、解らない。何に満足しているのかも分からない。
一体自分をどうしたいのかすら……。
俯く視界の中、下半身だけが一糸纏わぬ姿のままで、刺激を与え続けられ。
固い胸板は何時もと変わらず、延ばされた腕も普段見る姿と全く変わりはない。
淡暗い照明に剥き出しの半身。
一糸乱れぬ姿の支配者は、玩ばれて嘆く獲物の声や仕草を堪能するだけ。
終焉の予感すら見せない、長い刻は続く。先の見えない闇ばかりがこうして何時まで……?
「キモチイイって、1番素直な気持ちじゃないかなァ…自分を隠したり出来ない、唯一の表現だよね」
「ひぅ…ッ……ヤダぁぁ…や――っア―――」
「からっぽな気だるさになるまで…ボクは、なるほどちゃんとコウシテ、遊ぶ」
クチクチ…と扱き上げる鞣革の動きは実に微妙な速度。
新たに溢れ出す蜜を吸い、漆黒は一層妖艶に濡れ輝く。