BLUE CAT
□Tension
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―Tension―
『専属顧問』という、名前の響きばかりが良いそれにサインしてから、僕に与えられる自由はかなり制限されてしまったように感じている。
連休が近いともなれば、三人でまた何処かへ行きたいなと考えてみたりする、実に暢気な毎日だった。
でもそんな暢気さは今、その肩書ひとつで絶滅危機に瀕している。
まるで見えない鎖で繋がれてしまったような……そんな毎日だ。
「ハイ、よく出来ました!今回は中々早かったねぇ」
「あ……どうも……」
「あのネズミくんも、なるほどちゃんを気に入ったみたいだよ?今度、プライベートに話したい、なぁんて言ってたなァ……」
クライアントからの要請で、知り合いだという企業間のトラブルにも僕は回されるようになった。
それは勿論、紹介という形でだけれど。
しかし、元来の目的である顧問弁護士としての仕事といえば土曜の夜の会談しか無く、その時間に半ば強要されてしまう性的行為が、僕をあの二人から益々遠ざけてしまっていた。
「あの……それじゃ今日僕はこれで失……」
「愚者は戯言をもって口を開き、うわ言をもって口を閉ざす……って知ってるかな?」
クライアントの柔らかい笑顔の中に、それを許さないといった本質が隠されている。
怒らせてしまえば、一瞬にして豹変するあの表情を見るのが怖くて、僕は言いかけた言葉を飲み込んで俯く以外に道はなかった。
観念した僕を見て、クライアントは満面の笑みを浮かべながら、スーツの隙間に革の手を忍ばせてくる。
その異様な手の冷たさに僕はゴクリと生唾を飲み込んで、四肢を強張らせた。
「僅かな愚行は、知恵や名誉より高くついちゃうんだよ?」
「!う…んん…っ…!!」
「なるほどちゃんも、覚えておいた方がイイ………」
シャツの上から器用に突起を摘まれて、背筋にゾクリと震えが走る。
微妙な強弱で縒られ、その刺激に耐え兼ねた口からは啜り泣きの声しか出ない。
対になっている突起までもが次第にジンジンと痛痒くなってきて。
僕はソファに爪を立て、あの予感に恐怖しながら小さく首を振った。
「ホントは、カワイイお日様に面白いモノとか入れてあげたいんだケド……」
「ひ…んっ……!やっ……あ……」
「このキカイが、ボクを制限しちゃうんだ」
いつの間にかクライアントは片手に懐中時計を持っていて、それを僕の目前へ振り子のように揺らしながら、最後にキュッと強く摘み上げられ。
ビクンと身を震わせて悲痛な声を上げた後に、漸くクライアントは僕から離れ、立ち上がった。
視界が滲む中、僕は弾んだ息と共にソファに深く沈み込む。
サクリ、サクリと絨毯を踏み付け遠ざかる足音と、クスクスと笑う声。
こんな日々ばかりを、僕は繰り返している。
昔日に戯れた日々を夢見ながら。
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