BLUE CAT

□添い寝
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  【添い寝】
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二人の〜夕闇が〜
包む〜こ〜の窓辺に〜♪


付けっぱなしのTVから流れる音楽。懐メロの番組らしいそれが垂れ流しのまま右から左へと通り抜けてゆく。


(うぅぅ……開けたくない……)


今日は土曜日。

あの怒涛の先週末から……また、一週間が過ぎてしまった。

契約内容の中味に、【毎週土曜日、夜7時から10時迄3時間の会談】とあった。

その他にも色々な規約が盛り込まれていたけれど、それらは普通の会社等が雇う『顧問弁護士』と似通った内容であったから、余り気にはしていなかった。

1番の問題は、その『会談』だ。

毎週土曜日……あんな事ばかり続くのでは、精神的に参ってしまう。

デスクの上にある、先週と全く同じ現実を見ては、躊躇いと溜息を繰り返すばかりだった。

微かにあのコロンの香りがする白い封書。
今朝、出勤した時に見付けてからずっと……こんな調子で、時間ばかりが過ぎてゆく。


(見たくないんだよ……どうせまた……)


実際には『どうせ』と、半分は諦めてしまっていた。大人しくしていればそれで済む事じゃないか、と宥めている自分。

ところが、それを凌駕する事態が先週の内容に含まれていたから、得意のポジティブさに歯止め掛かってしまい、気味の悪い思考の反芻をひたすら繰り返すばかりだった。


あの、触れた唇は……一体―――。


(セクハラだって…立派な軽犯罪だぞ……)


唇を重ねてしまった…というか舐められた、というか。

それがクライアント独自の『単なるジョーク』であったとしても、僕にとっては非常に露骨な…笑えない冗談なのだから。


僕にとって、大事にしたい思い出と唇は直結していた。

それに皹が入ってしまうような気持ちなんて、あのクライアントには絶対に分かりっこない。

きっと、ただ笑うだけだ。


(読んだらまた…頭を抱える事になるよな……)


そんな『黒山羊さんからのお手紙』を開封すれば。

独特のコロンの香りと、気を滅入らす達筆なペン書体が、また僕の肩をガックリと落としてくれたのだった……。
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