BLUE CAT
□dinner
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【dinner】
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――確かに。
そう、確かに約束はした。半ば『仕方なし』というか……少し恐かったから。
今朝、出勤すると郵便ボックスに、白い封書が届いていた。
差出人の明記はないけれど……フワリと薫る、あのコロンの香り。
(うぅぅ……まさか…)
『まさか』が横切れば、次に訪れるのは大底が……
【今夜7時に、迎えに行かせます】
……ガックリと肩を落とす羽目になる。
25人の福沢は未だ金庫に眠ったままだし、恐かったあの記憶も残ったまま。
丁寧なお断りの電話をしようかとも思ったのだけれど。
それが更にまた厄介な事態を招く事になるんじゃないか、等と思って結局は諦めた。
「……厄払いとかしなかったからなのかな…」
僕は信心深い訳でもないし、どちらかといえば仏教派だと思う。
でも事務所には神棚があるし、更にツッコめば何故か聖書まで置いてある。
もしかすると。
ここに居る神様達や仏様が喧嘩でもして、更にはここに巣くう閑古鳥達がそれを助長させる様にバサバサと飛び回ってて、それを千尋さんが………
――プルルル!!!
「あわわわッ!!!」
ほんのり現実逃避気味な僕を、デスクで眠っていた電話が、現実へと引き戻し電子音を鳴らす。
「ッ!!なっ…成歩堂法律事務所で……す」
やっぱり現実は甘くない。
呼出し音に慌てた僕は、スチールデスクの脚角に足の小指をぶつけ、同時に受話器を取った。
おもむろに『いたぁッ!』…と言う訳にもいかないので、変わりに少し涙腺を緩めたのだ……けれど。
『おはよう!なるほどちゃん!!黒ヤギさんからのお手紙、読んでくれたかな?』
「!!き…局長……さん?」
『ウン!白過ぎて蒼く見えるヤギさんに手紙を書いたのは、ボクだよ』
お陰で意味の違う涙が出そうになった……。
小指の痛みに追加された、こんな精神的ダメージ。
今度は嫌な汗が滲み出る。
相変わらず口調は柔らかくて、リズミカルなテンポだった。