BLUE CAT

□振り向けば、一面の青
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―――残酷な出来事が
退屈を癒すなら

ボクはこの掌をただ
汚せばイイだけ――――




◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
【振り向けば、
     一面の青】
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




「――ああ…主観と客観という概念は実に理解不能だケド……ン…じゃあね。」


――プツリ………


世の中は面倒事が多いなァ――と。厳徒は屋上で独り呟く。

漸く沈黙した携帯をパクリと閉じて、今夜の会合の事や明日の予定等を考えていた。

下界は、ゼリービーンズの箱をひっくり返した時の様に慌ただしく蠕いている。


(コンクリートとネオン、スモッグと騒音の大海原で泳ぐサカナちゃん達は…脆くて淡くて……馬鹿、みたいだね)


それを幾分眺めてから、何気なしに辺りをグルリと見渡して―――ふと。


(あれ?……何だっけかなァ……こんなカンジ……)


不思議な何かを思い出しそうになり、厳徒は後ろ手を組みながら歩いて……少しばかり考えてみる。


―――多分。

それは遠い昔に置き去りにしてきた、明るくて淋しげで……得るものの少ないツマラナイ感情。

生まれながらに持ち合わせてしまった鋭い洞察力のせいで、ソレが酷く目障りだと思ってしまった。

だから、ソレは置き去りにしてきた。
残酷な出来事に、ソレは非常に邪魔だったから。


(『愛情』かなァ…多分……)


ソレは自分にとって。

皮の薄い果物みたいなモノだった。ソレは実にみずみずしくて、美味しいのだけれど……


(一カ所傷付いちゃうと、あっという間にダメになるんだよねぇ…)


周りを巻き込んで、腐ってしまう。
腐ってしまったソレは、醜く崩れ落ちて、掌を通り抜けてゆく。


まだ若かった頃は、ソレの為にコミュニケーションがとれなかった。だから何時もと同じモノしか手に入らなかった。

でも、今は違う。


ソレを置き去りにした時から、沢山のモノがこの手の中に入ってきた。
権力という魔力も手に入れた。それを行使出来る魔法の紙切れも集まった。


でも何故か満たされなかった。

ツマラナイと、思った。
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