BLUE CAT
□添い寝
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「ン!半分は今日使うからイイんだよ」
「え……あのぉ…すいません……『今日』って聞こえたんですが…」
「じゃあ言い方変えちゃおう!『今夜』使うんだよ!」
「こ…今夜って…エエエ!!まっ…まままま待った!!!!」
言い方を変えたって結局は同じ。今日だろうと今夜だろうと、結局は『今から』という事になる。
突然に『半日拉致』を満面の笑みで告げられた僕は思考するまでもなく、待った!と叫んでいた……悲痛に。
「今夜はこれから何にも予定ナイんだ、珍しくさ。でも明日昼から出張なんだけどねぇ……ココからだとエアポートまで近いんだよ!」
「まぁ確かにエアポートまでは近……って!いやいやいや!それは関係ないじゃないですか!!」
思考を持たなくなると、今度はこんな三流コントのようなノリになる。
そのくせ話しは、先に先へと容赦なく進むから、ツッコむ間に『決定済』の事項が次々に増えてゆくだけだった。
「取り敢えず、10時までが『会談』でね、明日の朝10時までが『半日分』って事だよ。エアラインが11時発だから時間に無駄もナイ。」
「いや…だからって何故わざわざ夜間なんかに……」
「明日は日曜日だしさ!なるほどちゃんは仕事休みだよね?だから問題ナイ!」
「あの……ですから、何故そんな急に……」
「アレぇ?気付かなかった、なるほどちゃん?」
グダグダな問いばかりを繰り返していた僕に、クライアントから放たれた、謎の疑問苻。
(気付かなかったって……何を……??)
これが三流コントの続きであって欲しい、と冷汗に願いを込める。
それでも目前のクライアントはニッコリ……でもキッパリと、その疑問苻の種明かしを話し始めた。
「このホテル、静かだと思わない?」
「…へ?」
「来る時さぁ、誰かとすれ違ったりした?しなかったよね?」
そういえば。
―――土曜の夜だというのに、エントランスにもフロントにも、下のカフェですら……誰も居なかった。
ここも閑古鳥が住み着いているのかな、気の毒にと…自分の事務所とを並べて同情はした、確かに―――。
「居るワケないんだよ。居ないように、ボクがしたんだから、さ」