BLUE CAT

□仔猫に首ったけ♪
4ページ/5ページ


まぁ…確かに。
ゴドーはスキンシップの塊だと成歩堂は思う。

それは抱擁であったり囁くような甘い台詞であったりする訳で。
御剣から言わせれば『あれは単なるセクシャル・ハラスメントだ』と表現されてしまうのだが。


(じゃ…コレは何だ……??)


未だにピタピタと頬に掌が当たっている。
それでも厳徒はニコニコと上機嫌のままに、それを続けていた。


「仔猫ちゃんの肉球みたい、だね」


最後に、両手で挟み込むようにギュウと押されて。
ボクはピノコかよと……口には出せず心中で呟いた。

長くパッティングされ続けたせいか、成歩堂の頬はほんのりと桃色に染まっている。


(いつか、こんなカオさせちゃうんだよ…覚えててね?)


それを終えた厳徒は、成歩堂に顔を近付けると、満面の笑みを浮かべた。


「触ってごらん?ボクはそんなに怖くナイって、解るから」

「へ??…い…いや…ああああのっ!!」


近付く顔は既に互いの鼻先が触れ、このままでは唇まで到達しそうな勢いだった。

のけ反る身体にも、限界というものがある。
このままでは、シートに倒れ込んでしまい…意味の違うスキンシップにすら成り兼ねない。

相手がゴドーにならば期待すらあるのだが…珈琲とコロンではボーダーラインがまるで違うのだ。

『セクハラ』表現の微妙なラインとは…正しくこれであったのだ。


「わわ解りましたから!!ストップです局長さん!!」

「あ、そう?ハイ!じゃあ、ドウゾ!!」


ドウゾ、と言われても…何をどう触れたら良いのかも解らない。

これで下手に機嫌を損ねるような事をしたならば、この密室に於いて逃げ場はない。

増して、これは車内なのだから『このまま拉致』という方向に傾くとも限らないのだ。


(うぅ…ソリティアみたいだ…)


そんな成歩堂の心情なぞ全くお構い無しな、その笑顔。

そんな相手は検事局長。
あの御剣すら一気に青ざめさせる程の権力者。

力の差も歳の差も、余りに違い過ぎる中で一歩間違えればアトム・ボン……。


(神様…仏様…チヒロさんっ…!!)


恐る恐る右手を延ばし、綺麗にカットされた顎髭に掌で触れた。
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ