BLUE CAT
□仔猫に首ったけ♪
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「スキンシップが足りなかったんだよ!うん、きっとそう!」
「え……スキンシップ…??」
人差し指のリズムがピタリと止んで、ピン、と親指の腹を滑らせ天を弾く。
何かを飛ばしたのかと、天井をチラリと見た途端―――
「じゃ、事務所まで送るから車にね!」
「え…いや!…うわ!!」
SPの1人がいつの間にか成歩堂の背後に居た。
先程の仕草は、その合図だったらしい……。
「ン!じゃ、行こうか!」
厳徒はコツコツと床を踏み鳴らして出口へと歩いゆく。
その間、席の合間から起立し一礼する検事局絡みの人物達に、『やぁ、泳いでる?』等と一声かけながら。
(充分だと思うぞ……スキンシップの類いは)
その姿を見る限りでは、気さくな上司という雰囲気。
――違うのは……
「ご起立を。」
「…………う。」
この怖面のSP達。厳徒の見た目が余りに朗らかだから、このSPが矢鱈強靭に見えてしまう。
成歩堂は肩を落とし、椅子から立ち上がると厳徒の後を追いカフェを後にしたのだった。
リムジンは相変わらず豪華な内装で成歩堂を迎えた。これがゴドーや御剣ならば違和感なく溶け込むに違いない…と思う。
その車内で、どうも馴染めず浮く自分はやはり世界が違うとまで思う。
そんな卑屈な思いのまま、再び仕切られた密室の中で成歩堂は厳徒の隣で今、借りてきた猫状態であった。
「ねぇ、なるほどちゃん?」
「な…なんでしょう…?」
「コッチ、向いて?」
今度は何をする気なのか……だが、逆らって怖い思いをするよりはと…恐る恐る厳徒の方へと向く。
すると、厳徒はニッコリと笑みながら両掌でピタピタ…と。
成歩堂の頬を包むようにしてパッティングをした。
「なるほどちゃんの頬っぺた!」
「?????」
掌が近付いた時、一瞬瞼をギュッとつぶったのだが、ただピタピタと頬を押されるだけを繰り返されるだけ。
意味が全く解らないその行動に、成歩堂は冷汗と疑問詞をかきまくっていた。
「スキンシップは大事だよねぇ。だから神ノ木ちゃんもしょっちゅうベタベタしてる。もっと仲良くなりたいから」